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野矢川第二公園で何度目の夜を迎えたのか、もうわからなくなっていた。半額シールが貼られたパンを買うことができたのは、確か3日前のことだったか。もはや日付の感覚が薄らいでいた。
手元にはまだわずかにお金は残っていたが、スーパーまで行く気力が残されていなかった。明日の朝もきっと、ここで1日を過ごすことになるのだろう。
家から持ってきていた文庫本を読みながら、日が暮れる前まで夏みかんが落ちてくるのを待つという日々も、手元にあるロールパンを買った日を最後に終わってしまった。
僕はひとつだけ残っていたロールパンを食べるより前に、水を飲みたかった。
闇に染まった空を呆然と見上げると、一羽のカラスが横切っていくのがうっすらと見えた。たとえそれが流れ星であったとしても、僕は何も願いはしなかっただろう。
ありったけの力を振り絞って立ち上がり、よたよたと歩いて、やっと水道までたどり着いた僕は、一心不乱に水を飲むと、その場にへたり込んだ。外灯が照らす砂のうえに、小さな塊が見えた。目を凝らすと、すぐにそれが雀の死骸だとわかった。じわじわと全身が蝕まれていくような感じがした。
僕は雀の死骸に手をのばした。せめてこの子をどこかに埋めてあげなければ、という思いで。
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