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この年、謎の新型ウイルスが世界中に蔓延した。
世界中で夥しい感染者と死者を出したこの新型ウイルス・・・
この小粋な喫茶店のある街でも、その影響が大きかった。
「やっぱり・・・あの店も閉めたのね・・・」
この世の中は、新型ウイルスから身を護る為に不急の不用外出は控えて、自宅へ籠る人々が多くなり、何時もは賑わう街の客足が極端に途絶えた。
客足が消えた街の店は、次々と経営難となり、次々と閉店していった。
「本当に困ったわ・・・喫茶店に客が余り来なくなっちゃったわ。
どうしよう、チャイちゃん・・・」
店長の雅子は、残り少なくなったカリカリを食べる毛がボサボサになった猫のチャイを抱き締めて悲しげに言い聞かせた。
「うにゃ~~ん・・・」
看板猫のチャイには、飼い主である店長の雅子の苦しみを感じ取って鳴いた。
しかし、不幸は更にこの喫茶店を襲った。
「すいませーん!保健所のものですが?」
突然防護服を身を構えた保健所の職員が、消毒液を散布しにやって来たのだ。
「ふーーーーッ!!」
「よしなさい!チャイちゃん!」
怪しげな人々が喫茶店にやって来たの威嚇する長毛猫のチャイを雅子を咎めた。
「この猫ですか?もしかして、猫にも感染してる可能性が・・・」
「やめてください!!チャイちゃんはこの喫茶店の看板猫です!!」
猫のチャイに手を伸ばそうとした保健所職員に、雅子は慌てて取り上げた。
「店長さん、知ってますか?この喫茶店に出入りしていた客に新型ウイルス感染の疑いがありましてね・・・」
「えっ・・・?!」
この騒ぎは、直ぐ様メディアに報じられた。
≪有名猫の某喫茶店で、パンデミック発生?!≫
遂に、この喫茶店に来る客は0になってしまった。
「どうしよう・・・!!経営資金も土地代を払う金も無くなったわ・・・!!
もう借金しなければ、この喫茶店をやっていけなくなったわ!!
どうしよう!!この店・・・もう閉じようかな・・・
本当にどうしよう!!ねえ!!チャイちゃん!!どうしよう!!」
店員を全員辞めてしまい、1面埃だらけの喫茶店の中で雅子は、すっかり痩せてしまった猫のチャイを抱き締めて激しく嗚咽した。
じりりりりり!!じりりりりり!!
その時だった。店のカウンターの電話が鳴った。
がちゃっ!
「はい!もしもし!!喫茶店『チャイ』です!!」
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