負けたら終わり

　ゲームはＨＰを失えばそこでゲームオーバー。
　負けたら、その瞬間にゲームオーバー。
　スポーツだって同じこと。
　１回戦で負ければそこで敗退。
　決勝戦まで登れる人はほんのわずか。
　そして、その下には敗退人たちが何人もいる。
「来週こそは負けるものか」
　来週こそ１位、いや１位じゃなくてもいい。
　せめて、３位にはなれるように、努力しよう。
　勉強だって頑張ろう。だって、僕は教師になりたいのだから。
　それに、全ての時間をゲームに費やさなくたって、最弱のアイテムしかもってなかったって、別にいいじゃないか。
　僕には、レアアイテムよりもずっとずっと大事な『経験』があるんだ。
　僕は何年もこのゲームをプレイしてきた。
　そんな『経験』を生かせば、最弱アイテムでも簡単にレアアイテムに出来るのではないだろうか。

「絶対に、負けられない」

　僕はそう思い、ゲームに集中した。

　　　　　＊＊＊

　こうして、彼はまたそのオンラインゲームに打ち込み、１年後には見事に『ゲーム界の大きな波』を再び巻き起こした。
　それにしても、あの『ゲームは負けたら終わり、スポーツと同じだと思ってる』は誰なのか。
　正解は――俺。何処にでもいる普通のプレイヤーさ。
　でも、俺が言いたいのは１つだけ。

　――ゲームは絶対に負けられない戦いなんだ。