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ごはん2
「ここ?」
「そう。ここ。」
僕のオススメの店、“架空の店バイキングイタリアン“。
「店名長すぎて看板に収まってないね。」
「あぁ。これね、なんか、店名の変更で入りきらなくってはみ出したんだって。」
「ほー?もともと、何だったの?」
「“架空バイリアン“。」
「……。」
「『うわ、ぜってー、ヤバい店だ』
……って思ったしょ。」
「思った。」
「僕も(笑)」
「まぁ、わかるよ?略したんだなって。」
「そうそう。でも、はじめは略しでやってたんだけど、ホームページの方が略してない方の店名でさ。」
「え?なんで?てか、ホームページとかあったのね。」
「あるよー。」
「ふーん。」
「ホームページが関係してるんさ。」
「ホームページが主役っ。」
「回想にはいります。」
「唐突だ。」
「ある日、」
「森の中~」
「いや、茶化すなって。気持ちわかるけど。」
「(笑)」
「真面目に聞いて。」
「おっけ(笑)」
〇〇さん、大丈夫?そんなに小刻みに震えるほど面白かったか?……まぁ、いっか。
────ホームページを見て、お客さんが食べに来るんだけど、お店の看板を見ると、
『あの、ここって“架空の店バイキングイタリアン“っていう所であっていますか?ホームページにはここって書いてあるんですけど……。』
……って戸惑いながらお客さんが聞いてくるんだって。それも数えきれないほどに。
それを店長は、
『これはマズイっ。』
…と思ったらしく、
『ホームページの店名にし直そう!』
……となって、今に至る。
「──ありがとう。」
「どういたしまして。」
「笑い止まった?」
「全回復した。」
「それはよかったです(笑)」
「─なるほどね、そんな経緯が……。時代を感じるぜ。」
「まぁ、言っちゃうと、1年くらい前に出来た店だし、看板の店名も1週間前に直したんだけどね。」
「衝撃の事実。時代は、はじまったばかりだよ。序論。」
「だな(笑)」
「だね(笑)」
「それで、ですね。僕はここの常連なんですよ。」
「ほうほぅ。して、味のほどは?」
「文句なしの星三つさ。」
「ふむふむ。三ツ星料理ってやつかね?……ではでは、参るとするか、子分よ。」
「へい、親分。
……ん?あれ?まって?どうして、僕は子分なの?というか、何子分?何親分?」
「えー??なんだろうね?」
あはは、と彼女は笑う。
相変わらず、何を考えているのかよくわからないやつだ。
「さてと、お腹すいたし中に入るか。」
「やった!待ってました!」
ガチャリ、とドアノブを回して中に入る。
カランカラン、と明るい音が店内に響く。
中は薄暗く、昼なのか夜なのか、と長い時間居座ると時間の感覚がわからなくなる。レトロな雰囲気と言えば想像がつくだろうか。店で流れている曲も昔なつかしって感じの洋楽。
そして、僕はこの店のことをよく知る常連の一人。それだけこの店を好んでいるということだ。
「てんちょーう!いる~?食べに来たよ~!」
「いらっしゃ~い。いるわよ~。およ?珍しい……。2人?」
中にはド派手な金髪でかっこいい顔をしたモデル体型の男性がいた。
「おーよ。」
僕はどや顔をする。
そんな僕を店長はスルー。
「はじめまして❤️ショートの髪型が似合ってるお嬢ちゃん。」
「はじめまして~。ありがとうございますっ!気に入ってるんですっ!店長さんの髪、金髪がすごく綺麗で似合ってますね!」
「あら、ありがとうっ!あたしも気に入ってるの、この金髪❤️紹介が遅れたけど、いかにも、あたしがここの店長よ。見た通り、オネェだけど、気にしないで❤️」
と、とびきりの笑顔で店長が彼女にオネェを暴露。決して隠れオネェではない。オープンオネェだ。男性の格好でオネェ口調なだけだ。
彼女も笑顔で、
「全然気にしません!むしろ、美味しいって聞いて、食べに来ましたっ。」
と。元気にハキハキと言う。
「大歓迎よ~!よぉし!腕をふるっちゃう!てきとーな席に座ってて~。」
「はーい!」
彼女は嬉しそうだ。店長も嬉しいようだ。
店長はキッチンに入る前、僕の元へきて、
「かわいい彼女ね~?大事にしなさいよ~?」
ふふっ、と微笑みながらキッチンに入った。
『そんなんじゃない』
と。誰にも届かない声でボソリ、と呟いた。
───そんなこと、あるわけないのに。
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