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この匂いは……お線香?
お盆とかで祖父母の家に行ったとき、こんな匂いがしていた気がする。
にしても、やけにデカイな、この部屋。
「何を余所見している? 私と相対しなさい」
低音のイケボで、そう言われ振り向くと、想像とは全く違う閻魔の姿があった。
オレの勝手な想像では、身体はデカくて鬼のような顔、ゴツい手足に紅い瞳……みたいな感じだったが、普通の人間と変わりない。
多少背は高いが、線は細く、黒いマントを羽織って眼鏡をかけていた。
「あ……、すみません」
「まあ良い。こちらに掛けて」
「はい」
見るからにフカフカな長いソファーに座らされ、ついウトウトしてしまいそうになる。でも、寝る訳にはいかない。今後のオレがどうなるのかを知るために。
「さて……。お前は自分の名を覚えておるか?」
「名前?」
「そうだ。生前呼ばれていた名だ」
……ん?
そうだ、何故気付かなかったんだろう。オレは自分の名前を忘れていた。両親も息子、としか言っていなかった。わかるのは性別が男だって事くらいだ。
「覚えていません……」
「そうか、やはりな。"名喰い"に喰われたか」
なくい?
なんだそりゃ。
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