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「だから言ったろう。まあいい」
亀先生が地球儀の上から指示棒で紙をスクロールすると、紙が広がり始める。紙は机からはみ出し、ベッドほどの大きさになった。
それを床に敷き直す。
「おむすび」がどこから来たかって?
工場だろうか。その前は…海苔、海苔もまた工場か。米、鮭…そうだ、味付けに塩や、醤油?も使ってるかも…包装もあるぞ…わからないことだらけだ。
「正解を書こうとするからだ。こんなものは、想像力とスピードだよ」
呆れたように亀先生がいう。
「昨日、授業した小学生なんか、早いものだったぞ。これだから大人は…」
くそ、そう言われると負けん気に火がつく。僕はことに勉強においては負けず嫌いなのだ。
思いつくままに「おむすび」「味噌汁」を素因数分解し、クモの巣のように紙に書き出していく。
工場から市場から、畑まで、味噌や醤油の原材料の大豆や、玉ねぎの種まで書いてやったぞ。ん?玉ねぎは種から育てるのか?まあそんなのはいい、正解でなくてもいいのだ。鮭に至っては川まで書いてやった。
すでに紙はペンで書いた線と文字で埋め尽くされていた。これでどうだ、と亀先生を見て次の指示を待つ。
「まあ、そんなものだろう」
亀先生は素っ気ない。
「ちょっと下におろせ」
そうか、地球儀からだと指示棒も床には届かない。
偉そうに、と思いながら、また床におろしてやる。
次にまた亀先生が指示棒で紙を操作すると、書いた線はそのままに、文字だけが幾分か小さくなり、スペースができた。
今度は青いペンをネクタイのストライプから取り出し、僕に渡した。
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