亀先生の授業

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今度こそ、その小学生には勝ったに違いない。亀先生を見る。 「量ではな」 亀先生が応える。量では?質で劣るというのか? 「彼は、[医者]と書いたぞ」 「は?」 これのどこに[医者]が入るのだ。 「彼の母親はスーパーのパート従業員でな、病気になったとき、仕事ができなくなったのだ。医者のおかげで仕事復帰できた。だからここに書いた」 亀先生が赤ペンでスーパーの上に[医者]を書き入れる。 そうか、青ペンの人たちを支える仕事も書けるのか。それなら、介護士、保育士、看護師、主婦だって… 頭に浮かぶ仕事が次々と亀先生によって赤で書き足される。 紙は見るまに赤・青・黒でぎゅうぎゅう詰めになった。
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