3 小さな綻び

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病院の駐車場は、小さくて3台程しか停められない。平日の午前中なのに、既にいっぱいになっていた。 少し先の道路脇で、加賀は車を停めた。 「ここでいいか?」 「うん、ありがと」 「終わったらまた連絡くれ」 「え」 知佳がうさぎのキャリーと共に車を降りたのを確認してから、加賀は言う。 「帰りの足もいるだろ、適当に時間潰してるから」 驚いた。そんな気の利いた事、悟ですらしてくれたことはないから。 病院はそれなりに込んでいて、1時間くらい待たされた。でも、ここの先生はしっかり診てくれる。1時間待たされて、診察5分…なんてこともなく、しっかり診てくれる。だからこそ、リピートが多くて、また混んでしまうのだが。 チョコの食欲不振は、加齢によって歯のかみ合わせが悪くなったことによるものだろうということだった。 歯を削ってもらって、食欲増進のための薬も貰う。うさぎの歯は、伸び続けてしまうので、ひと月後位にまた来てほしいと言われる。 会計を済ませてから、加賀に連絡してみた。結構時間掛かってしまったので、もう待ってなくてもしょうがないかとダメ元だったが、すぐに行くから、待ってろと言われた。 キャリーを抱えて待っていると、加賀の車が道幅ぎりぎりまで寄せてくれる。 「ありがと」 「大丈夫だったか、うさぎ」 加賀はケージを覗き込む。 「うん。歯を削ってもらって、薬貰った」 「削る? 歯を? 虫歯かよ」 加賀の発想に思わず笑ってしまう。 「違う違う。うさぎって固いもの食べないと歯が伸び続けちゃうの。だけど、うちの子はもうおばあちゃんで、固い草とかエサは食べられないから、人工的に削ってもらうことになったの」 「へえ。大変なんだな。頑張ったな」 キャリーの網目越しに、加賀はチョコを覗きこんで、目を細めた。
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