3 小さな綻び

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他愛ない会話の後で、加賀はゆっくりと車を走らせた。 「なんて名前?」 「え?」 突然尋ねられて、何のことかわからずに、聞き返す。 「うさぎ」 「あ、えとチョコ」 「チョコ? まんまのネーミングだな」 ぷっと吹き出された。チョコは全身が茶色なのだ。 「私がつけたんじゃないわよ。あの子は学校から貰ってきた子だったから…」 「学校?」 「あ、主人が小学校の教員だから…」 「ああ」 と軽い相槌を返して、加賀はフロントガラスを向いてしまう。うさぎにはあんなに関心を示したのに、知佳のプライバシーには全く興味がないらしい。 その後は大した会話はないまま、知佳の家の近くのスーパーに着いた。 「うちさ、以前に犬飼ってたんだよな。ゴールデンレトリバー」 人目につきにくい端の方に停めてから、加賀はふと思い出したように言った。 「ゴールデン…結構大きい犬よね」 「そう。でもさ、10才なる前に死んじゃったんだよな」 「犬で10才未満だと短命になっちゃう?」 「平均が10才くらいだからね。がんになっちゃったんだけどさ、俺は忙しくてあんまり構ってやれなかったから、定期健康診断とかも行ってなくて。発見された時はほぼ手遅れで、痛み止めくらいしかしてやれる治療がなかった」 「……」 加賀が自分のことをこんな風に話すのは珍しい。その話の中に、今の加賀のプライベートに関わる情報はないかと、知佳はつい聞き入ってしまう。
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