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窓からみえる空はまだまだ冬の色を漂わせている。まだ春は遠い、どんなに望んでもまだ暖かさは秘めていない、それが今の自分をあらわしてるようで、また明日は雪が降るかもしれない。今日の暖かさは幻のように束の間に過ぎないかもしれない。
「あたしだっていいたかない、だけどおなじことばっか聞かされたらそうなる。それにあたしはゲームと現実はちゃんと別にしてるよ、混同してないからさ、それは理解して」
たしかにキャラのコスプレしてここに来てるわけじゃないし、たしかに見た目は普通だし。
「はーい、泰子ちゃんはまともな一般市民ってことね」
「また何? 今度は何、何がいいたいの?」
「ううん、何でもない」
思いっきり微笑むと泰子は、慌てて目をそらした。それは、あたしに対する愛情表現なのか、それとも、何か後ろめたいことを隠しているのか……。
「あたしね、なぎさのそういうとこ、いいと思うよ、たださ、なんていうのかな、ちょっと現実逃避したがるところがあるでしょ、それが、よくいう退屈になってるんじゃないの?」
「それはよくいわれる、ただのわがままだって、だけど、それじゃ、みんなと一緒でしょ、毎日、おんなじことを繰り返して、愚痴とか噂話、悪口いってばっかり、つまんない、そういうのってバッカみたい、あたしそう思う、こういう世界ってやったもの勝ちみたいなとこあるでしょ?」
「まあね、そうなのかな、あたしなんて、このまま流れていきたい。何にも考えずに決められた通りにさ、難しい道とか、自分で探したくはないかな、面倒くさいから、決められたレールに乗っかっちゃいたい」
この中はだれもいないし、2人ぼっちで静かすぎた。だから余計、泰子の言葉よりもーー。この後そのレールは2つに別れてしまって重なることはもう二度ないのかもしれない、そう思うと、哀しさというより寂しさとかそれに似た感情があふれてきた。それは得体の知れない何かなんだろうけど。
それに心を引っ張られると、今の全部までを否定してしまいそうで。
「なぎさ、あたしはさ、なぎさみたいに考えるのは嫌い、今を否定するのは好きじゃない。だけど、それで前向きになるのはいいことだと思うよ」
「ありがとう」
そんなことで安心はする、今はーー。
二人で外に出て、新鮮な空気を吸った。
「明日もまたここで会おうね!」
なぎさは笑った。あたしはなぜかその顔を見た途端哀しくなった。
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