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「あたし、はじめっからわかってた、こうなる予想はついていた」
「なんのこと」
「だから、わかってたの、たぶん、なんにも変わらないって」
いつもいつもこんな感じではじまる。
あたしだって好きでグチってるわけじゃない。だけど、言わないとはじまらない。
「あーそれは、いつもの例のやつでしょ」
またか、みたいないいかた、最後はため息混じりになっている。
「あたし、やっぱり失敗しちゃったのかも、もっと別の可能性のある何かを探すべきだったって」
こんな空気の重い、自分が自分じゃなくなるような場所にいる、それがまた苦しくなった理由。それ以外には考えられない。
「なぎさ、あんたがいってることは、堂々巡り、いつもの代わり映えのしないくだらないものにすぎない! あたしはそう思うの」
目の前にいるのはただの人形か? それともーー。
「あたしの話をまともに聞く気ないでしょ? 全然理解してくれてない。だから、発展も進歩もしてない、ただ繰り返すだけ、もっと吸収しよう、そして、目覚めて!」
「ゲームキャラみたい、ロールプレイのレベルアップみたいにいわないで」
怒りも出ない、この子は人をゲームの延長みたいに見てる。そんな気がする。
「ふん、いってること聞いてくれないなら、すねちゃうから、もう、あんたとは口きかないから」
ヤダヤダ、この繰り返し。ヤダヤダこればっかり、あんたともおんなじ会話しかしてない気がする。
「わかった、少しは考える、それでも、未来がない、ここにいても未来が見えない、それが哀しいの」
「未来ね、それは自分でつくりだせばいいの。数ある未来の中から、自分で選び出す。知ってる? パラレルワールドって!」
「聞いたことあるけど、でも、あれはこじつけじゃないの? 説明できないことを無理やりに何でもパラレルワールドにしちゃえばいいっていう強引なやりかた」
「そういう見方もあるけどさ、理屈じゃ説明できないことなんていくらでもあるんだよ、それってヒトって存在がなんで、ヒトと呼ばれてるか、あたしたち人間がなんでメカニズムをもってここに存在してるのか、そういうことのすべてに関わってくると思うの」
「そんなに興奮しなくてもいいけど……、あたしただいってるだけじゃん」
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