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私はとても平凡な人間です。
17歳、女子高校生、顔の作りは中の下くらい。成績は中の上、運動はそれなり。
手足は左右に一つずつ、爪は手足に5こずつ。鼻と口は一つ、目は二つ、耳は左右に一つずつ。
肌色の皮膚、頭には黒い髪の毛がある、普通の普通の人間です。
ただ、この世界は随分とおかしくなりました。
1日は38時間あります。
随分と長くなりました。どんどん伸びていったのです。
「×××××××××」
声をかけてきたのはクラスメイトのあかりちゃん。
あかりちゃんには頭がありません。皮膚の色はどす黒い紫色で身長は3メートルあります。
何を言ってるのかは分からないのでとりあえず笑顔で頷くと、あかりちゃんは納得したように席に戻っていきました。
とんとん、と肩を叩いてきたのはみずほちゃん。
緑色のぬるぬるとした体液に包まれた彼女は球体です。
クルクルと回って私に何か伝えてきたので神妙な顔をして返事をします。
私の返事に対してクルクルとより一層激しく回り出し、体を赤く染めていきます。どうやら怒ったみたいです。
それでもしばらくすると席に戻って行きました。
「ぱなあまらはわまはさかたは」
教室に入ってきて挨拶をしたのは先生です。
先生は目玉が24個あります。身体中毛だらけで手足はありません。
もぞもぞと動いて教壇につくと目を細めました。にこりと笑っているのです。
「はなみさ、わまさたかかやまはさな。はまさばばびばばさわまにた、はまかなや」
べべべ、と、先生が笑います。連絡事項は終わりのようです。
授業が始まります。
---
授業が終わるともう夕方です。
授業時間は不規則で、5分で終わるときもあれば次の日まで終わらない時もあります。
「みみみみみ」
家に帰るとお母さんが出迎えてくれました。
お母さんは30㎝で、手が6個、爪が体中に生えています。体毛は一切ありません。
「みみー、みみみ、み?」
何を言ってるのかよく分からず、聞き流すとお母さんは怒ったようでした。
「み、みみ、みみみみっ!」
ちゃんと話を聞きなさい、とでも言ってるのでしょうか。
「ごめんね、授業が長くて疲れちゃったの。ちょっと休むね」
そう言って部屋に戻りました。
この世界は随分とおかしいです。
ですが、どうして私は自分が普通だと思ってるんでしょうね。
鏡を覗くと身長157㎝の普通の人間の女子高生である私だけが映っています。
肌色の皮膚、黒い髪、目は二つ、口と鼻は一つずつ、手足は二つずつ……
「香奈、ご飯の時間だよ」
お父さんが呼びにきました。
お父さんは四つん這いで耳が8個あります。50センチはある舌を常に出しています。皮膚の色は灰色で頭には髪の毛の代わりに針が生えています。
「今行くね」
父のそばに行くと、彼は目を細め、5メートルはある腕を伸ばし、私の頭を撫でました。ざらざらとやすりみたいな皮膚が私の頭を撫でています。
「香奈は可愛いね。私たち夫婦の宝物だよ。どんな姿でも……」
どうして私は自分を普通だと思っていたんでしょうね。
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