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「よ、よせ歩美!何もするんじゃねえぞ」
「そんなこと言われるとやりたくなってきちゃうよね。猫って美味しいのかな。まずどこに刺すかが重要だよね。一番血が飛び出るとこにしなくちゃ。俊一はどこがいいと思う?」
狂気の沙汰ではなかった。
「やめろ!」
「夫になってくれたらね」
拉致が開かないと悟った俺は全てを諦めた。
「わかった。なってやるよ夫に。だからその猫はそのままにしておいてくれよ」
「ありがとう。じゃあさ最後に好きって言ってくれない?」
「好きだよ」
これが歩美との最後の会話だった。俺の部屋に入る前に警察らしき人に話しかけられた。
「あなたが三井俊一さんですか?」
「そうですけど」
「あなたの部屋で一人の女性と一匹の猫が死んでいました。死因はおそらく毒薬です。そして遺書らしきものにはあなたに命を狙われていたと聞きました。
署までご同行願います」
これが人生で二度目の地獄であった。
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