第1話

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第1話

さて、私はこれがはじめてのイベントだ。ということで言わせてもらいます。 更衣室、狭……ッッ!!!!!!!! なんとなく楽屋のようなものを想像していた。よくよく考えたらそんなわけないんだけど。 床には養生テープが貼ってあって、皆その区切りの中にぎゅうぎゅうに詰まってメイクや着替えをしていく。 「う、うまく着替えられるかな」 「大丈夫よ」 愛夢ちゃんは何回かイベントを経験してるらしく、さっさと進んでいってしまった。慌ててついていくと、ちょうど2人分くらいのスペースを見つける。 「ここで良いか」 ぼそっと呟いた愛夢ちゃんは、手慣れた様子でキャリーケースを置く。そのまま流れるようにウィッグネットを被りメイクをし始めた。 「え?」 「何」 「メイクからやらないとダメとかある……?」 「無いわよ」 無いのか。良かった。私はいつも着替えてからメイクをするから……。 今回はとある漫画に出てくるキャラクター2人のコスプレだ。私は語学に堪能な執事のレイ、愛夢ちゃんはクールで格好いい王室教師のメイ。どちらも男性キャラクターだ。 ワイシャツとジャケット、ハーフパンツにベルト、あとブーツとネクタイを身につける。黒髪の長髪ウィッグを横に置いて、私はようやくメイクに取りかかった。 色白な彼に合わせて選んだ下地とファンデーションを塗って、普段メイクでは考えられないほどしっかりとアイラインを引いていく。 それにしても、カラコンをつけているせいで鏡に写る自分がどうしても自分じゃなく見えてしまう。アイラインやダブルラインを駆使して目を大きく見せる前段階だと余計に違和感が半端じゃない。 メイクを終わらせてからテーピングで顔を吊る。レイは尋常じゃないほど小顔だから相当吊らないと。 ウィッグを被り、サイドテールに白リボンをつけた。せっかくメイクをしても長い前髪で片目が隠れてしまうのは残念。 とりあえず、これで自分は完成だ。 「凛月ちゃん、終わったんだけど……」 と横を見た瞬間、私は手に持っていたくしを落としてしまった。
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