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第1話
隣にはもう可愛い愛夢ちゃんの姿は居なくて、代わりに見たこともないくらい顔の整ったイケメンが居た。どうしよう、脳内処理が追いつかない。というかこの人は本当に愛夢ちゃんなのだろうか。
「ひ、人違い……」
「じゃないわよ」
あっ、愛夢ちゃんだ。
愛夢ちゃんは私の方をまじまじと見つめる。何故だか妙に心臓が高鳴ってしまうのが恥ずかしい。
勝手に緊張して震えてる私をよそに、彼女は感心したように呟いた。
「麻菜……じゃなかった、志乃ってやっぱり美人よね。レイが実在してるみたい」
「それは私のセリフなんだけど……」
愛夢ちゃんは普段は男装ばかりだから、コスプレはこういうイベントの時くらいしかしていないはず。なのにどうしてここまでもキャラクターの再現度が高くなるのだろうか。
「とりあえず早く行きましょう、長居したら邪魔になるだろうし」
「う、うん」
シークレットブーツのおかげで随分と背が高くなった愛夢ちゃんは、さっさと荷物をまとめて立ち上がった。慌てて私もメイク道具をキャリーケースに放り込む。
さあ、いよいよイベントだ。
「とりあえず私たちのことは置いておいて、楽しむわよ」
荷物置き場にキャリーケースを置いて、愛夢ちゃんは私に微笑んだ。
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