ねえ知ってる?僕の本心

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ねえ知ってる?僕の本心

「お金が!なぁぁああい!!」 ごろごろと床を転がりながら叫ぶ乙女。 「だから今月こんなに飲み会詰め込んでいいの?って僕聞いたのに…」 呆れた顔をしてベッドの上で洗濯物をたたむ幼なじみ(男) 乙女の部屋で男がランジェリーを手にぷんぷん怒るというこの光景、実はほぼ毎月見られる。 「だって!私は!出会いを求めてるの!そのための飲み会なのよぅ」 そう叫ぶのはこの部屋の主、高宮皐月20歳彼氏いない歴3年経験人数2人。 「ふぅーん?」 これに対して溜息をつきつつも返事をしてあげる彼女の幼なじみの僕、根本良一。彼女はわかっていない。彼氏欲しいーと叫ぶ度に僕の機嫌が悪くなっていくことに。 そう、僕は皐月のことが好きだ。もちろん彼女は気づいていない。っていうか気づいてたら普通彼氏欲しいとか叫ばないよね!?僕、大ダメージ受けてるよ?毎回。そんなこんな僕は彼女への気持ちを隠しながら良き友達として世話を焼いている。向こうも僕のこと男だとはもう思ってないみたい…。 僕と彼女の出会いは生まれた時。同じ病院で同じ日に生まれ母親同士が知り合って仲良くなった。もちろん幼稚園、小学校、中学校、高校まで一緒。大学も学部は違うけど同じ大学に滑り込んだ。実は皐月の方が頭がいい。皐月は医学部、僕は文学部だった。でもキャンパスは近い。家から離れたキャンパスだから僕らは下宿住まい。もちろん親が心配するからお隣同士。皐月は勉強はできるけど家事はできない。僕は勉強はちょっと。だけど家事は得意。だからこうやって毎週部屋に来ては皐月の愚痴を聞きつつ家事をやってあげている。 「女で医学部だから何よ!自分より頭いいからって怖気付いて…良一ぃ私、何か間違えたかなぁ。医学部目指してこんな頑張ったのに彼氏の1人も出来なくて、人生設計ミスった?大学生になったらできると思ってたのにぃ」 あ、しまった僕が少し目を離したうちにこいつ、酒飲んでやがる。皐月はお酒が入るとよく喋りよく泣く。それで人肌恋しくなるのか僕によりかかって寝る。僕にとっては…信頼してくれて嬉しい反面意識されてないんだなって再認識しちゃってちょっと辛い時間。 「皐月?寝た?」 人の気も知らないで僕によりかかって寝る皐月の寝顔はやっぱり可愛い。 「皐月はなーんも間違ってないよ。頑張ったよ。ちゃんと目標作って頑張り続ける皐月は偉いよ。僕に勉強教えて同じ大学に入れたのは正解だったよ。大丈夫、僕は皐月のこと嫌いにならないから。ずっとずっと好きだから。早く僕に堕ちてよ皐月。僕が家事も家計簿も全部やるよ?仕事に集中できる環境作るよ?他の男なんてもう探すのやめよう?」 嗚呼、こんなことを寝ている間に頭の上でいつも囁かれてるって皐月が知ったら彼女、どんな反応するんだろう。僕がホントは皐月に対してこんなにドス黒い感情を抱いているなんて。怖くて言えないや。僕はヘタレだから… ねえ皐月。僕に堕ちてくれるの、待ってるよ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!