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観察日記1日目
僕の名前は、影山察男。どこにでもいる陰キャである。丸眼鏡にそばかす顔。背は低く、スポーツも得意ではない。彼女いない歴=年齢の、正真正銘の典型的な陰キャである。
「.........はぁ、」
学生生活は勿論キラキラしておらず、冴えない毎日を送っている。
しかしそんな僕にも、"趣味"というものがある。まぁ、他人に言えないような趣味なのだが.........。
今日の最後の教科は古典。皆にとって、最高の"お昼寝タイム"である。
(古語辞典とノートと...それと教科書と......)
最後列の自分の席で授業の準備をしていると、後ろから誰かに体当たりされた。体当たりされた瞬間に机に手首を打ち付け、僕は痛みに顔を歪めた。
「いだ......っ、」
「さ~つおくぅ~ん、元気ぃ?」
「えっ、あ......っはい、げんき、です......」
体当たり......というか僕の背中に被さってきたのは、半田魁翔。このクラスのヤンキーだ。耳だけではなく、口元にも大量のピアスが開いている事を、僕は知っている。
「察男くぅん、察男くん、オベンキョー好きだよねぇ?」
「ふぇぇ......?あ、は、はい...だいしゅき、です......」
「うんうん。そうだよねぇそうだよねぇ...」
僕の肩に手を置きながら、彼が頷く。大きく開いた胸元からは、マリン系の香水の香りがした。
「じゃあ、ほい。これ」
「え?な、なんですか?これ......」
彼が嬉しそうに僕の頭に置いたのは、一冊のノートだ。新品同様に綺麗なノートを見て、僕は目を丸くした。
「俺のノート。寝ちゃうから、代わりに取っといて?」
「え?!」
驚いて声をあげる僕。この人は何を言っているんだ......?ノートくらい自力で取ってくれ。しかも頼む理由が「寝るから」なんて......そんなの納得いかない。いくわけがない。
「あ、あのっ!の、ノートは自分で......」
「お~い皆、席つけぇ~」
「は~い。じゃ、そゆことでよろしくねぇ~」
「え、えぇ?!あ、あの......っっ!!」
タイミングよく現れた教師に僕の言葉は遮られ、昼寝宣言をした彼は嬉しそうに手を振って席についてしまった。
(な、なんてこった......)
キンコンカンコンと響くチャイムを聞きながら、僕はがっくりと肩を落とした。
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