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「.........はっっっ!?」
「...あ。起きた?」
「......え?.........ええぇ!!??」
ベッドに横たわる僕と、ベッドに凭れて僕の方を振り返る半田君......そして窓の外の夕焼けを見て、僕は飛び起きた。
「え?えぇ!?な、なんで......えぇ!?」
「スプタン見たら気ぃ失うンだもん。ビビったよ」
「すぷ、たん?」
「え?覚えてないの?ほら、これぇ......」
「ひ......っ!?」
半田君が舌を出すと、また先端が割れた。割れた先端がウネウネと動く様子を見ていると、また気を失うかと思った。
「そんな珍しい?これ」
にゅ、と彼が舌をしまった。珍しいも何も、好んでやる人なんているのだろうか?僕が首を縦に振ると、彼はまた笑った。
「やってみると楽しいよ?やる?」
首を傾げる彼の言葉に、今度は首を横に振ると、彼はまた笑った。
「......じゃ、俺もう帰るね」
「はい......」
夕陽も沈みかけ、外が暗くなった頃。半田君が「そろそろ帰るね」と言ったので、玄関まで見送る事にした。
「また遊ぼっか。明日......は休みか」
「そうですね...明日は休みです......」
「......そうだったね」
彼は暗くなった空を見上げて、それから少し寂しそうな顔で僕を見た。
「......明日来ればよかったな」
「え?」
「いや、だからさ?明日遊びに来れば......」
そこまで言って、彼は口を閉じてしまった。
「......いや、やっぱいい」
「え??」
「...また明日な。バイバイ」
「えっ、あ......さ、さようなら......」
手を振る彼の顔はまだ寂しそうで、僕は見送りながらも少しだけ心配になった。
夕食と入浴を済ませ、僕はまたベッドに寝転んだ。
「......ふぅ、」
天井を見ていると、彼の寂しそうな顔がぼんやりと浮かんだ。
(......なんであんな顔したんだろ)
ごろ、と寝返りを打つと、布団に付いたんだろう半田君の香水の香りがした。
(......今日は石鹸系の香りか)
クンクンと匂いを嗅ぐ。彼はほぼ毎日違う香水を使っているので、毎日嗅ぐのが楽しみである。
(......いや、僕は変態か)
クラスメイトの観察日記を書いていたのだ。変態以外の何者でもないだろう。
(......ん?)
ぼんやりと見ていた、ベッド横に置いてあるミニテーブルの下。そこにレシートが落ちている。
(......半田君、捨ててったのかな?)
ベッドから起き上がり、ミニテーブルの下を覗く。手を伸ばしてレシートをつかむと、そのレシートは綺麗に半分に折られていた。
「.........?」
「まさか」と思いレシートを開くと、そこには電話番号とSNSのID、それから短いメッセージが添えられていた。
"また連絡してね"
まるで、片想いの人に連絡先を教える女子のようだ。心臓がドクンと跳ねて、口元を押さえる。
「......深い意味はない、んだよね??」
その言葉を肯定するように、遠くから犬の鳴き声が聞こえた。
(案外ロマンチックな所あるんだな、半田君って)
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