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観察日記3日目
今日は日曜日。学校は勿論、休みだ。
「......よし、と」
宿題を済ませ、ついでに週明けに行うテストの勉強をしようとした......時だった。
「察男~!お友達来てるわよ~!!」
下の階から、母さんの声が聞こえた。遊ぶ約束は入れていないはずだが、一体誰だろう?
「はぁ~い!すぐ行く~!!」
ノートと教科書を閉じ、部屋のドアを開けて階段を下りる。
(友達って......誰だろ?)
友達らしい友達がいない僕には、見当もつかない。しかし「僕に友達はいません」と無視をしてはいけない気がする。階段を1段1段下り、やっと玄関が見えた。
「すみません、お待たせし............ほぁ?」
階段を下りきって見えた"お友達"の姿に、僕は変な声が出た。
「おっはよ。遊び来ちゃった」
へへ、と笑って手を振るのは、いつもつけているピアスを全て外し、黒いスーツを着たクラスのヤンキー・半田魁翔君だった。
「ど、どうしたんですか?」
「え?暇だから遊びに来た」
「......そう、ですか」
遊びに来たにしては、服装が整い過ぎている。僕が服装の理由を聞こうと口を開くと、母さんが僕の頭を小突いた。
「こら察男。話は家に上がってからにしなさい」
「あ、ご、ごめんなさい.........」
「どうぞ」と僕が家の中に招くと、半田君は母さんに向かって「すみません。お邪魔します」と小さく頭を下げた。
「母さん、お茶の用意するから。察男はお友達と部屋行ってなさい」
「わ、分かってるよ......」
母さんに背中を押される僕を見て、半田君が小さく笑った。
部屋に着くと、半田君はすぐに僕のベッドに飛び込んだ。ろくに整えていないベッドにうつ伏せになり「ふぅ」と息を吐いている。
「だ、大丈夫......ですか?」
「んン~......疲れた」
半田君は指先で布団をいじりながら、本当に疲れたようにそう言った。
「あ、の......今日、何かあったんですか?」
「あ?......ぁあ、今日?うん。法事行ってた」
今度は仰向けになった半田君が、大きく息を吐きながらそう言った。ヤンキーの彼も法事には真面目に参加をするようだ......が、僕は1つ気になった。
「......制服じゃないん、ですか?」
それは彼の服装だ。中学や高校のように制服がある"学生"は、法事に参加する時に制服で参加をしていいはずだが......どうしてスーツなのだろう?
「ん?あぁ、制服?無くした」
「.........制服を無くした???」
どうやったら制服を無くせるのだろう。僕の頭に疑問符が列を成す。
「だからいっつもカーディガンでしょ?俺」
「......なるほどです」
そういえば彼は春夏秋冬問わずカーディガンを着ている。ずっと「何故だろう。まぁかわいいし良いか」と思っていたが、そういう理由があったのか。
「......慣れないからめちゃくちゃ疲れた」
半田君が慣れた手つきでネクタイを解くと、形が崩れた襟から白い肌が見えた。
(う~ん、けしからん......)
けしからん自覚がない半田君は、更に襟のボタンまで外し始めた。鎖骨まで見えるようになった状態でもう1度大きく息を吐き「疲れた」と呟いている。
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