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「"ピアス取れ"って怒られたし最悪......もう俺、何もやる気起きない......」
半田君が「ふぅ」と息を吐いた。余程しんどかったらしい。
「だ、大丈夫ですか......ん?」
仰向けに寝転がる半田君の鎖骨。そこに赤い痣が見えて、僕は首を傾げた。
「......鎖骨、」
「ん?」
「鎖骨、どうしたんですか?赤くなってる......」
そう言って僕が鎖骨を指さすと、半田君は鎖骨をチラッと見て、それからソッと襟で隠した。
「......ピアス塞いだ痕。気にすんな」
「は......はい......」
半田君はそれだけ言うと、僕に背中を向けた。そして何度かモゾモゾと動き、僕の枕を抱き締めた。
「......寝る」
「あ......はい。おやすみ、なさい......」
「スーツ脱がないと皺になりますよ」とは言えず。僕は眠る半田君の背中を見つめて「あぁ、日記があったら書くのになぁ」と思った。
「失礼しま......あら、」
「し~......っ」
半田君が寝息を立て始めてしばらく経ってから、母さんがお茶を持ってきてくれた。「静かにして」と指を立てると、母さんは静かにお茶を置いてくれた。
「......寝ちゃった?」
「うん......疲れてたみたい」
「あらまぁ......大変ね」
母さんが小さく笑うと、半田君も「んへへぇ」と笑い出した。
「そっちの卵はぁ......爆発するからぁ......んふふ......だめぇ......」
僕の枕を抱き締めながら変な寝言を言って笑う半田君に、母さんは目を丸くした。
「......卵が爆発する夢、なのね」
「うん......みたいだね」
「まぁイースターも近いものねぇ」と、母さんまで変な事を言い出した。
寝始めてどれくらいが経っただろうか。母さんが「買い物行ってくるわね」と出かけてしまい、家に半田君と2人きりになった。
(......テストの予習でもするか)
半田君は寝ている。しかし観察日記がないので、どうする事も出来ない。
.........という訳で、僕は週明けのテストに備えて勉強をする事にした。
「......なるほど分からん」
ベッド横に置いたテーブルに教科書とノートを広げ、僕は頭を抱えた。テスト範囲が広すぎるのだ。
(あの先生、毎度毎度テスト範囲が広いんだよなァ......でも3点問題多いんだよなぁ......)
頭を抱え大きく息を吐くと、背中を向けているベッドの上で、半田君が動く気配がした。
「ん......んン?」
ギシ、とベッドが軋んだので振り向くと、半田君が枕を抱き締めたままベッドに座っていた。
「あ、お、起きました?」
「.........。」
声をかけるが、半田君はボーッとしてしまっている。枕を抱き締めたまま壁を見つめる横顔は、ピアスをつけていないせいか、ひどく幼く見えた。
「......半田君?」
「.........ん?」
もう1度声をかけると、今度はしっかりこちらを見てくれた。
「だ、大丈夫でっ.........」
そして「大丈夫ですか」と言おうとした僕の唇を、半田君の唇が優しく塞いだ。
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