観察日記3日目

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 「"ピアス取れ"って怒られたし最悪......もう俺、何もやる気起きない......」 半田君が「ふぅ」と息を吐いた。余程しんどかったらしい。 「だ、大丈夫ですか......ん?」 仰向けに寝転がる半田君の鎖骨。そこに赤い痣が見えて、僕は首を傾げた。 「......鎖骨、」 「ん?」 「鎖骨、どうしたんですか?赤くなってる......」 そう言って僕が鎖骨を指さすと、半田君は鎖骨をチラッと見て、それからソッと襟で隠した。 「......ピアス塞いだ痕。気にすんな」 「は......はい......」  半田君はそれだけ言うと、僕に背中を向けた。そして何度かモゾモゾと動き、僕の枕を抱き締めた。 「......寝る」 「あ......はい。おやすみ、なさい......」 「スーツ脱がないと皺になりますよ」とは言えず。僕は眠る半田君の背中を見つめて「あぁ、日記があったら書くのになぁ」と思った。  「失礼しま......あら、」 「し~......っ」 半田君が寝息を立て始めてしばらく経ってから、母さんがお茶を持ってきてくれた。「静かにして」と指を立てると、母さんは静かにお茶を置いてくれた。  「......寝ちゃった?」 「うん......疲れてたみたい」 「あらまぁ......大変ね」 母さんが小さく笑うと、半田君も「んへへぇ」と笑い出した。 「そっちの卵はぁ......爆発するからぁ......んふふ......だめぇ......」 僕の枕を抱き締めながら変な寝言を言って笑う半田君に、母さんは目を丸くした。 「......卵が爆発する夢、なのね」 「うん......みたいだね」 「まぁイースターも近いものねぇ」と、母さんまで変な事を言い出した。  寝始めてどれくらいが経っただろうか。母さんが「買い物行ってくるわね」と出かけてしまい、家に半田君と2人きりになった。 (......テストの予習でもするか) 半田君は寝ている。しかし観察日記がないので、どうする事も出来ない。 .........という訳で、僕は週明けのテストに備えて勉強をする事にした。  「......なるほど分からん」 ベッド横に置いたテーブルに教科書とノートを広げ、僕は頭を抱えた。テスト範囲が広すぎるのだ。 (あの先生、毎度毎度テスト範囲が広いんだよなァ......でも3点問題多いんだよなぁ......) 頭を抱え大きく息を吐くと、背中を向けているベッドの上で、半田君が動く気配がした。 「ん......んン?」 ギシ、とベッドが軋んだので振り向くと、半田君が枕を抱き締めたままベッドに座っていた。  「あ、お、起きました?」 「.........。」 声をかけるが、半田君はボーッとしてしまっている。枕を抱き締めたまま壁を見つめる横顔は、ピアスをつけていないせいか、ひどく幼く見えた。  「......半田君?」 「.........ん?」 もう1度声をかけると、今度はしっかりこちらを見てくれた。 「だ、大丈夫でっ.........」 そして「大丈夫ですか」と言おうとした僕の唇を、半田君の唇が優しく塞いだ。
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