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「......メロンパンとサンドイッチと唐揚げ。あと卵焼きとグミと梅キャンディ......ですよね」
「......分かりすぎてて気持ち悪い」
"好きな食べ物は?"という極めて簡単な問題に答えると、半田君は枕を抱き締めて後ずさった。
「何でそんな詳しいの?俺、察男君の前で梅キャンディ食った事あるっけ?」
「......休み時間に食べているのを何度か見ました」
「.........きもちわる」
「う".........っ、」
心の底から軽蔑したような顔の半田君。当たり前のリアクションとは分かっていても辛く、思わず顔を歪めてしまう。
「まぁ、察男君が気持ち悪いのは今始まった事じゃないし?そんな気にすんなよ」
「......はははぁ...」
ポンポンと肩を叩かれ、僕はぎこちなく笑った。
「まぁいいや。じゃ、2問目ね」
(何だかんだ楽しんでるよなぁ......)
枕を抱き締めたまま、半田君が「う~ん、何にしよかなぁ」と楽しそうに問題を考え始めた。
「ぅし!決まった!じゃあ2問目!!"俺のよく行く場所は?"」
「え?!お、屋上と......駅前?」
「ありゃあ~......残念。ハズレで~す」
「えっ!?」
「正解は"屋上と駅前と察男君の家"で~す」
「......左様ですか」
どうやら、僕の家も"よく行く場所"に追加されているらしい。嬉しそうに枕を抱き締めて、半田君が「えへへ」と笑った。
「......というわけで!不正解した察男君には罰ゲームです!」
「えぇ!?そんなの聞いてないですよ!?」
「うん。今思い付いたもん」
「くぁ~~......」
本当にこの人は......勝手に設定を追加するなんて、自由にも程がある。
「で。気になる罰ゲームの内容は.........」
「.........ごくり」
「でで~ん!"俺とキスする"です!!」
「あ~、何だそんなこ......ふぁっ!?」
え?今、この人は何て言った?キス??半田君と僕が???それは罰ゲームですか???僕的にはご褒美なのですが????
「俺の事が大好きな察男君の為の罰ゲームで~す。良かったねぇ~」
「えっ、あっ、おっ......ふえぇ...」
緊張で語彙力を失った僕の隣に、半田君が座る。手に持っていた枕は、ベッドの上に"ぽつん"と置き去りだ。
「じゃ、ほら。キスして?」
「えっ、ぅあっ......っほ!?!?」
慌てる僕を枕のように置き去りにして、半田君は話を進めていく。
(え、ちょっ、待て。キスってどうやるの?)
目を閉じてキスを待つ半田君の顔を見つめながら、僕は必死に考える。
(えっ、ちょっと待って......待って待って...)
どうしていいか分からずフリーズしていると、半田君が目を開けた。
「......しないの?」
「......したいけど、方法が分かりません...」
「......くわぁ~......これだから童貞は.........」
「ど......っ」
確かに僕は童貞だ。しかしそれは半田君も同じなのでは?観察してきた限り、彼女と思われる人物はいなかったし、そういう噂も聞いた事はない。
(でもヤンキーだし......半田君イケメンだし......もしかしたら彼女いるのかもなァ...)
もやもやと余計な事を考えていたら、半田君が「仕方ね~なァ~」と頭を掻いた。
「じゃあ教えてあげるから、その通りにして?」
「えっ?」
「俺がキスを教えてあげるから、察男君はその通りに動いてね?って事。おっけ?」
「......お、おっけぇ......です」
ははぁん、これがラッキースケベというものか。
鼻血が出そうになるのを必死に堪え、僕は半田君の言葉に頷いた。
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