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(えぇっと...ま、まずはどこから......?)
「触ってみる?」とは言われたが、どこから触れていいのか。
(痛くないって言ってたけど......ほんとかな)
「痛くねぇよ」と彼は言っていたが、体に穴を開けているのだ。痛くない訳がない。僕なら気絶する。
(ど、どうしよ......ええぇ...)
行き場のない手をそのままにして彼の顔を見つめていると、彼は眉間に皺を寄せた。
「......ハッキリしねぇ奴だなぁ」
「ひっ!!ご、ごめんなさいっ!」
謝ると、彼はため息をついた。
「じゃあ見せてやるだけな。ほら、」
「あ、ありがとごじゃっっっっ!!??」
そう言って彼が髪を耳にかけると、耳が"トンデモナイ事"になっていた。
片方の耳たぶには大きな穴が開き、耳の至る所にピアスが輝いている......。耳たぶだけでは足りなかったのか、軟骨にも大量のピアスが輝いている様を見て、僕は本気で気を失いかけた。
「これが2ゲージで、ここの軟骨が14ゲージ。あとはみんな16ゲージで、ここの軟骨はウザいから塞いだ」
彼がピアスを撫でる度に、ピアスがカチャカチャと鳴る。本当に痛くないのだろう。しかし見ているこっちは痛くて堪らない。特に「これが2ゲージ」と言った大きな穴......一体彼は何になりたいのだろう。
「あ、あばばばば......」
「あ?ンだよ。ビビってんの?」
「だ、だってそんなに穴開けて......」
「開けたいから開けてンだし、別に良くね?てか初めてだわ、クラスメイトに耳見せたの」
「そ、そうなんです......か??」
「うん。"察男君になら見せていいかなぁ?"と思って。サービスよサービス」
「......ありがとう、ございます」
「そんなサービスいりません」とは言えず、僕は形だけのお礼を告げた。
僕が抑揚のない声でお礼を言うと、半田君は髪を耳にかけたまま「お!そだ!」と手を叩いた。
「察男君、めっちゃおもしれぇもん見せてあげよっか?」
「......結構です」
「"3月20日。マスクを上下逆さにつけている事に気付いていないようだ"......ってマジかよ。こういう事は本人に言えよ」
「わぁぁあ!読まなくていいですっ!分かりました!見ます!見たいですぅっ!!」
これが"飴と鞭"というやつだろうか?観察日記を持って「うん。いい返事」と笑う彼を見て、僕は泣きそうになった。
「んじゃあ、目ぇ閉じて?」
「え?あ......はい......」
大人しく目を閉じると、半田君はすぐに「いいよぉ」と言った。
「.........?」
目を開けると、そこには舌を出した半田君が。そして何となく分かってはいたが、やはり舌にまでピアスが開いている。
(ひ、ひえぇ......くわばらくわばら......)
分かっていても、やはり怖い。体をブルリと震わせると、半田君がニヤリと口角をあげた。
「......ぇあ、」
そして苦しそうに呻いたと思うと、舌先がパックリ割れた。
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