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それから数日経ったある夜だった。いつものように仲間と集まっていると、ゆっくりと近づいてくる人影を見つけた。
あれ……あのホームレスか?
男は驚く仲間達の輪の中を歩き、春樹の元へ来ると深く頭を下げた。
「あなたのおかげで久しぶりにお腹が満たされました。本当にありがとうございます。これ足りないと思いますが、お金をお返しします」
そう言うと男は両手を差し出した。掌には五円玉や十円玉など小銭が何枚も乗せられていた。
「ぶはっ、春樹礼言われてるし」
「ホームレスから金恵んで貰うのかよ」
聞こえる笑い声に春樹は顔が熱くなるのを感じた。勢いよく立ち上がると、男の手を払った。バラバラと小銭が音を立てて地面へと落ちていく。
「金なんていらねーよ!!」
そう言うと歩き出す春樹に仲間達も腰を上げる。
「あーあ、じいさん可哀想」
「春樹ー年寄りには優しくしてやらねーとダメだって」
「うるせーよ。さっさと走りに行こうぜ」
歩きながらもふと振り返れば男が小銭を一つ一つ拾っているのが見えた。
何なんだよ、あいつ。何がしたいんだ。
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