第一話

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第一話

 その日のバイトは、遅くまでシフトを組んでいた。理由には、夏休みだから時間があったというのもあったし、夏休みだから金が欲しくなったのもある。  帰り道、辺りは真っ暗だった。ぽつんぽつんと、街灯が並んでいるだけ、足下が良く見えない。いつも通る道のはずだが、今、目の前にあるような光景は久しぶりだった。ふと、海の臭いを感じる。あの夏休みの記憶が呼び起こされた。懐かしいね。短い間だったけど、君と過ごしたあの日々。今度久しぶりに、絵でも描こうかな。波の音でも聞きたくなって、暗くて景色は見えないけど、近くの海浜公園に寄ろうと思いついた。横断歩道の無い道を渡ろうと思った時、一台の車が走ってきた。道を渡るのは、車が通りすぎてからにしようと、待っていた。
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