第二話

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「先輩! もうバイト終わりましたよ!」 「ちょっと待って」  俺は荷物を手にして、彼女と外に出た。 「何処に連れていってくれるんですかぁ?」 「別に大したとこじゃないよ」 「えぇ~!」 「いや、俺100円も借りてないんだけどなぁ」 「こういうのは、金額の問題じゃないんです!」  彼女は、人差し指を立て、そう説いた。 「じゃあ、何が大事なの?」  俺がそう問うと、彼女はこちらを見てしばらく黙った。そして、ふいっとあちらを向いてしまった。 「そういうのは、最初っから分かっててください」 「……」  きっと、この行為の本質を汲み取れと、言いたいのだろう。これは、ただお礼をしているのではないのだと、ただ食事をするのではないのだと。きっと、彼女はこの行為を「デート」と思うのだろう。それくらいは、俺にも分かる。  ただ、彼女のことに関して、分からないこともある。彼女は何故変わったのか。最初に出会った頃の彼女は、落ち着きの無い感じで、無垢な可愛さがあった。今だって可愛いことに変わりないが、こんな風にあざとい性格では無かったはずだ。環境への順応とでも捉えるべきか。どちらにしろ、彼女の本質は捉えづらい。本当は何を考えているのか、俺にフラれた今の関係をどう考えているのか、それらが汲み取れない。外面ばかりが目に入って、彼女の人間性が入ってきそうにない。でも、女性っていうのは、そういうものなのかな。きっとこれが、「女心が分からない」というやつだろう。それでも、出会った頃の彼女は、素直で可愛かったと思うのだ。そして、今はその素直さが無い。自分が至らないから、彼女のことが分からないのではなく、彼女が変化したから、分かりづらい人になってしまったのではないかと、時々思う。
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