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「今日はどこ行くんや?」
帰宅部の一人が尋ねると、暁海はウーンとわざとらしく眉間にシワを寄せて考えるフリをして、すぐに「ゲーセンやな!」と答えると、質問した男子がすかさず「今日もかい!」とツッコミを入れ、ガハハと笑いが起こった。昨日とまったく同じやり取りである。まあ、三上もなんだかんだ毎日付き合っているので楽しくないことはないのだが、こういう関西ノリにはまだ少し疎外感を覚えてしまうのであった。
「よっしゃ行こか!」
暁海の号令で、三上以外の皆が一斉に自転車のペダルに足をかけた。三上はこの中で唯一、地元民ではなく電車通学だったので、自転車という"足"を持っていなかった。だから、寄り道する際の交通手段はいつも決まっていた。
「はいよ」
暁海は三上の方に振り向いて、サドルをバンバンと叩いた。彼の自転車は、後輪の中央のボルトを外して、足を乗せられる棒状のステップに取り替える改造が施されていた。
「……ん」
三上は、暁海の両肩に手を乗せて、グッと地面を蹴って勢いよくステップに足を乗せた。
「分かっとると思うけど……」
「警官が見えたら飛び降りる」
「さすがソラっち。……よいっしょお!」
男子二人分を動かすために、暁海が二倍の気合を入れる。ゆっくりと動き出した自転車から落ちないように、三上は肩に乗せた両手に力を込めて、器用にバランスをとった。最初の頃はフラフラして危なっかしかったが、今ではすっかり慣れたものだった。
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