47人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ
結婚式を終えた夜。ディアナは部屋に戻るやいなや、アクエスによってベッドに押し倒されていた。
「ア、アクエス……これはなに?」
「これから、初夜だということはわかっているな?」
「え、えぇ……」
でも部屋に帰ってきたと思ったら、性急に唇を求めてきて押し倒されたのだ。ドレスも着たままだし、アクエスなんて国の礼装のまま情事に飛び込もうとしている。これで戸惑わずにいる花嫁がいるというのなら、会ってみたいくらいだ。
「そのように怯えるな、優しくする」
まるで飢えた獣に見下ろされているようで、そうは言われたもののディアナはすっかり体を縮こませていた。
アクエスは強ばるディアナの顔に気づいてか、優しい手つきでその頬をスルリと撫でる。
これから彼と愛し合うことはディアナも望んでいたことなので、どんなに怖くても受け入れたいと思う。
その覚悟を示すために、ディアナは頬に触れていたアクエスの手をギュッと握った。
「アクエス……あなたになら、すべてをあげられる」
たとえ骨の髄まで貪られても、心は求められた幸福感に満たされるのだろうとディアナは思った。
やがて、アクエスは優しくその体に触れていく。最初は躊躇いながらだったのに、どんどん激しくなってディアナの白い肌はわずかに赤く上気していた。
「ディアナっ……すまない、余裕がなくて」
首筋に唇を這わせたまま、アクエスは切羽詰まったように囁いた。吐息が肌をくすぐり、ゾワリと栗立つ。
体の芯が甘く疼き、ディアナは恥ずかしさに目を潤ませた。
「いいわよ、私だって……っ、とっくに余裕がないもの」
「ふっ……愛しいことを言ってくれるのだな、俺の王妃は」
汗ばむディアナの肌はいつもより艶やかで、アクエスの理性を簡単に崩壊させる。ずっと焦がれていた女に触れる喜びは言葉で言い表すことはできないほどで、アクエスは余裕を装い笑みを浮かべようとしたのだが、無理だった。
息を乱した余裕のない彼の顔に、ディアナは胸が切なく締め付けられる。
「アクエス、永遠に私を愛してくれる?」
甘えるように尋ねれば、アクエスは少しだけ体を起こして極上の笑みを浮かべる。
「あぁ、死が二人を分かとうと、永遠にお前だけを愛そう」
アクエスの唇が結婚式の誓いのように再び、ディアナの唇に落ちてくる。
王になるアクエスにも王妃になるディアナにも、これから数え切れない困難と苦労が待っているのかもしれない。それでも今だけは、すべてのしがらみをドレスと共に脱ぎ捨てて、あなたを感じよう。
──永遠の愛を、心に刻むために。
END
最初のコメントを投稿しよう!