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最近と言っても去年の10月ぐらいにオープンした 家の近くに出来た大型のペットショップ 車で5分程度だから比較的に近いと思う 品揃えはこの辺りじゃナンバーワンであり、 価格も個人経営のペットショップやホームセンターよりかなり安い だから俺は、此所で90㎝水槽を8千円とかで買っていた ネットだと送料が別だったり、ガラスだと割れるのが心配だから店舗で買えるのは助かるよ さて、ペットショップに入ればアルコール除菌があり気持ち的にやれば中へと入る 因みに、これを書きはじめた時は自粛なんて無かった 二月頃、途中まで書いてて放置してたんだよな…… さてさて、ペットショップって見に来るだけで楽しいよな 「 お帰りなさい。なんて 」 『 嗚呼、ただいま。新しいの入った? 』 「 そうですね、先週に頼まれていた小赤200匹とネオンテトラ400匹は入りましたよ 」 『 んじゃ、それは確定で。助かるよ 』 「 いえいえ、常連さんですので 」 此所がオープン初日から、3日に1度、下手したら1日2度なんて来てる事がある為に 社長とは顔見知りだし、店員には逆に育て方を教えてるぐらいに仲良くなった その為に、普通なら個人経営のペットショップでさえ入荷するのに時間がかかる生き餌(小赤、ネオンテトラ)やら、此処だと簡単に手に入る それに値段だって1匹8円とかだから安いんだよ 小赤は他の店じゃ33円とかするから、ちょっとチリも積もればなんとやら……レベルで高い ふっと笑った笑顔の可愛い店員さんは入荷担当の子だからよく会話をする 俺達の家にも遊びに来て「まるで熱帯魚店ですね!」とか言ったほど 若いのに、と言うか同い年ぐらいなのに魚に詳しいから話も弾む 『 んじゃ、ちょっと見させて貰うな? 』 「 はい!ごゆっくり 」 レジから真っ直ぐ左へと向かった先にある熱帯魚コーナー 熱帯魚、金魚とか売っていて、最初の品揃えは悪かったのだが……熱帯魚に五月蝿い俺が、あれがほしい、これが欲しいとかいい初めて種類が増え アランも金魚すきのために、彼のために増えた まぁ、アラン曰く……金魚の質は悪いから買わないんだけどな 素人の入荷で入ってきた金魚は“選別外れ“と言って 形が悪かったり、色が悪いとかで金魚は安く出回る その中の一つにすぎない アランは金魚のコンクールで金賞の土佐綿魚やららんちゅうの遺伝子を持つ子を飼っているんだ なんつーマニアなんだと思う 最近コメットの稚魚が生まれたとかで喜んでたな…… まぁ、そんなわけで俺達はこのペットショップが好きだ 「 ルイ、ルイ!見てみてブラックゴーストがいる。昔いたよねぇ~ 」 『 懐かしいな。ブラックゴースト、相変わらず面白い泳ぎをする 』 非売品と書かれた20㎝のブラックゴースト これも2週間前に店員から「面白い魚っていますか?」と聞かれて紹介した魚だ ブラックゴースト、その名の通り身体は真っ黒でゴーストのようにヒラヒラと泳ぐ不思議な魚で 1匹飼いが出来るなら飼ったら楽しいかもしれない 肉食だから他の魚のヒレやら、特に小さいものをいれてると食われるから気をつけてな 俺等が高校生ぐらいにアロワナと共に買ってたのだが、20㎝を越えて姉貴にとられた 「なにこれ面白ーい!」とかで連れて帰った姉貴は、水替えに失敗して星にさせたらしい 渡した俺達も悪いからな、今はなんとも言えないが、結構気に入ってた子だから新しいゴーストを買う気にはなれなかった ゴーストはそうやってペットショップにいるのを見て楽しむぐらいがいい 「 おっ、新しいファイヤーパロット 」 『 俺が飼ってるって言ったから増やしたんだろうか…… 』 「 せーかいです!お陰さまで15匹入荷したんですが、残り2匹になりました! 」 ひょこっと現れた世話役?担当の店員もまたオープン初日からの知り合い 彼女は当日、魚の事は余り知らなかったのだが俺達と話すにつれて詳しくなっていた 今じゃ、俺より詳しいんじゃないかってぐらいに調べていた 『 ファイヤーパロットは見た目が愛らしいから人気だろう? 』 「 そうですね。好きになってくださるお客さん増えてきて、追加注文してます 」 『 ついでに混泳出来る、シルバーアロワナかノーザンバラムンディ辺りも入荷したら、同時に飼ってくれる人もいるだろう 』 「 言うと思ったのでちゃんと(レジにいたあの子が)入荷予約してます 」 『 さすが、伊尾ちゃん達分かってる~ 』 「 いえーい 」 元々ビジネスの仕事をしていた俺は、店長の許可を貰ってるから売上、売り方とかについて色々教えてたりしていた 勿論、熱帯魚コーナーの売上は予定より大幅に上がったらしい 俺のメリットと言えば、入荷してくれる魚が増えたということ 最初はこのペットショップ、熱帯魚にヒーター入ってなくて白点病やら、金魚の餌のやり方が悪くて転覆病、尾腐れ病とかになってたのだが 余りにも魚が可哀想だったから対処法を伝えたら、その病気が無くなったと喜んでくれた その事もあり、俺達はちょっと信用されてる お互いにハイタッチしていれば、さっきのレジにいた安達ちゃんがやって来た 「 魚、何匹に分けていれますか? 」 『 んー数が多いし50匹でいいよ。買ったらすぐ帰るし 』 「 分かりました! 」 『 あ、そういや安達ちゃん 』 「 ん?なんですか? 」 視線の先にアランと話してる伊尾ちゃんがいるが、彼等は金魚の方がすきだもんな、無理ない 立ち去ろうとした安達ちゃんを止めれば、彼女は振り返り俺はポケットからスマホを取り出し告げる 『 次、いつ家に来る?ロイヤルブルーディスカスの稚魚がそろそろ売れるけど。1匹500円で手を打つよ 』 「 1匹3000円はするディスカスが、マジっすか!?あ、すみません……興奮の余り 」 『 いいよ、それでどうする?2日前から餌抜く必要あるからさ 』 移動し新しい環境に置くために、魚は数日餌を抜く必要があった その為に今回は、その予定を聞きに来れば彼女は裏へと行く 「 あ、ちょっと待ってください!カレンダー持ってきます! 」 『 はいよ 』 裏へと向かった彼女を見ていれば、ふっとさっきから気になっていた老人の夫婦へと近付く 『 こんにちは、金魚を選んでるんですか? 』 「 あ、えぇ……そうなの。亡くなって…… 」 『 へぇ、今いる子はどんな子ですか? 』 見ているのは黒い出目金だった だからちょっと話を聞いてて心配だった為に問いかければ、お婆さんの後にお爺さんの方が教えてくれた 「 此のくらいの普通の、赤い子じゃ 」 『 琉金かな……この種類じゃ無いですか? 』 「 あ、そうそう!これじゃ 」 この場所にでも売ってる流金へと指を指せば二人は頷いた 『 流木を飼ってるなら出目金と一緒にすると、目を突っつかれるかも知れませんね 』 「 目を? 」 『 出目金やスイホウガンは一緒に泳がせると他の子から突っつかれたりするんです。この水槽も其々違うでしょ? 』 「 確かに、一緒にはいってないわね…… 」 『 そう、だから流金のように身体は丸っこいけど泳ぎが得意な子は気性が荒かったりするので、同じく流金、またはこっちのサクラリュウキン、タマサバとかいいですよ 』 「 こっちの子はダメなの? 」 『 ランチュウやオランダシシガシラはまた種類が違うので、飼うなら別の水槽がいいですね 』 其々魚へと指をさして、特徴を伝えてから混泳をするのを止めさせれば 二人は納得したように頷いた 金魚は特に、同じ種類でなければその個体が怪我したり病気になることが多い 姿が違う事を理解してもらえば、お爺さんは告げた 「 じゃ、このキラキラの子ならどれがいいんじゃ? 」 『 サクラリュウキン……俺、実は目利きは悪いので上手い人を呼んできます。アラン、ちょっと良いところにいた。御前、このサクラリュウキンを綺麗な個体を選んでやってくれ 』 「 えっ、俺でいいんですか?本気で選びますよ? 」 「 勿論、ぜひ頼む 」 「 やった、じゃ網と容器を貰ってきます 」 アラン、後は任せたと親指を向ければ彼は伊尾ちゃんから網と容器を受け取り 水槽の前にある蓋を開ければ、背を曲げ選び始めた 正直、この中で選ぶのは大変だろうが それでも金魚の目利きに詳しくない店員が見るよりいい 『 そういえば、水合わせってご存じですか? 』 「 んや?全く 」 『 先程、井戸の水を使って飼ってるって聞いたんですが……ペットショップの水と井戸の水は温度も違うんで水合わせ必要なんですよ。これをやるだけで長生きします……ちょっとやり方お見せしますね 』 頭に疑問符を浮かべてたから、俺は伊尾ちゃんから魚を入れる袋を受け取り空いてる水槽の水をいれ あたかも魚を買ってきたばかりのようにやり方を説明した 『 袋を浮かべて30分、その後にコップ一杯の水槽の水をいれ30分待って、またそれを繰り返して。袋いっぱいになったら魚だけ中に入れて下さい 』 「 水ごとじゃないんだね? 」 『 そうこの袋の中にはペットショップの水が入ってる、だから他の金魚がビックリしないよう魚だけなんですよ 』 本当はペットショップの水をいれたら、菌とかいたらいけないんだが 敢えて分かりやすく伝えれば、二人は頷いてくれた 「 水槽の子達も、その水合わせになってしまうからか…… 」 『 そう!そういうことなんです! 』 「 ほうほう、今まで入れてすぐに死んでたのは水合わせしてなかったからなのかぁ…… 」 「 そうみたいですね 」 『 ペーパーショックで亡くなったんでしょうね…… 』 マジかよ、って思ってアランも(この人達に売って大丈夫?)みたいな顔をしたけど信用しよう 二人が聞いてたなら大丈夫だろう…… 「 選んだよ、3匹 」 「 おぉ、これはきれいじゃな 」 「 他に必要なものとかありますか? 」 お婆さんの言葉に、俺達は目を合わせてから笑った 『 いえ、必要ありません。今使ってる餌と水槽で十分です。もし気になることがあればまた来て聞いたらいいですよ。彼女達が教えてくれます 』 「 そかそか、ならまた来よう 」 「 えぇ、また来ますね 」 「 ありがとうございました! 」 サクラリュウキン、普通のリュウキンよりちょっと高いが購入してくれた 普通のペットショップなら、きっと此所で必要なものを押し付けて売るだろうが 俺達が必要だと思ってるのは一度きりのお客さんより“常連客“それは何よりも大事だ 夫婦は嬉しそうに、大切に育てると言って立ち去れば 俺達は軽くてを振ってまた来てねと伝えた 「 流石元ホスト。常連客を得るのが上手い 」 『 馬鹿いえ、ビジネスの常識だ 』 夫婦が立ち去った後にポツリと呟いたアランに、いつの話だと思ったがそこはスルーした 一度すべてを揃えて買ったお客さんは もし死んだときに「あのペットショップの情報は悪い」とかで二度と来ないが 買い揃えてないお客さんは「何故死んだのでしょう?」といいに来る人が多い そこで買い揃えようとするから、一度より二度、三度来る人の方がよく買ってくれるんだ ビジネスの常識さ 「 あの、袋詰め終わりました 」 『 ありがとう。会計お願いします 』 「 あ、ついでにこれも 」 「 はい! 」 『 御前……めっちゃ買うな…… 』 よく見ればアランの持ってるかごには大量のフィルターやら砂利、餌やら入ってた 最近買ったんじゃないっけ?と思ってたら彼は答えた 「 レイアウト変えたくて、それに金魚が便秘気味だから餌変えてみる 」 「 お会計1万4千と…… 」 「 カードで 」 「 カードおあづかりしますね 」 ほらな……常識客の方が額が違うんだよ そこで買おうってなると、チリも積もればなんとやら…… 因みにアランはこのペットショップで、月10万円分は買い物してるし 俺もアロワナの餌代を含めて12万ぐらい使ってる それだけで熱帯魚コーナーの利益はあるだろう と言うか、社長がご機嫌に言ってきたから 他のホームセンターとかで買うのを止めたんだよな 「 500円券が出ました。どうぞ次回使って下さい 」 「 やった、フィルター買ってこよ 」 『 ……俺より彼奴の方が買ってね? 』 「 アランさん、昨日も来てましたので……なにに使うんでしょう? 」 『 さぁな 』 寧ろ俺にもわかんねぇよ ペットショップの店員が傾げるぐらい、彼奴はちょくちょく買いすぎだ 『 あ、ヒレナガニシゴイ入荷できる?3匹欲しい 』 「 何色ですか? 」 『 銀、金、オレンジ系統いたらどんな柄でもいいよ 』 「 では10匹入荷するので、入荷後1週間後にお電話しますね 」 『 おん、宜しくお願いします 』 「 いえいえ、此方こそいつもありがとうございます 」 もう少しで池が完成する そうなった時にヒラヒラのニシキゴイが増えたら楽しいからな 他にも入荷をしてもらっていた、羽衣モーリーを数匹買ってこの日は帰った でも、後に……此処に行くのでさえ困難になるとは 俺達は思わなかったん まぁ、安達ちゃんが来る日も分かったし ディスカス達には旅の準備をして貰おうかな
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