第九品 コスパ最強?お好み焼き

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第九品 コスパ最強?お好み焼き

「粉ものが食べたい!」  ある時ふと思ってしまった。  上京してから、しばらくが立ち、お酒が飲めるようになったあたりからのことだった。  外に飲みに行くのもお金がかかるし、一人で粉ものもハードルが高い。  しかし、お酒の味を覚えてから大人たちの言うことを思い出すのだ 「お好み焼きやたこ焼きで飲む酒は格別だ」と  実際言ってることは想像に容易い。  外カリ、中フワで様々な食材の食感が混然一体となり、口の中が楽しくなる。味が濃い目のソースとキャベツの甘味、入った具特有の味、バランスが良すぎるのだ。  この食感も楽しく、最後に口に残るソースをビールやハイボールで流し込む。  きっと得も言われぬような味なのだろう。  想像したら、口の中はお好み焼きを求めだし、それ以外を受け付けない状態だ。  さて問題は用意ができるかということだ。  個人的なイメージとしては、作るのもさることながら、材料を用意する方が大変だと感じた。  今我が家には何があるのだろうと思い冷蔵庫を漁ると、卵とベーコンぐらいしかなかった。  他と言ったら小麦粉と調味料しかなかった。 「これでどうしろと…」  口に出るほどどうしようもないと思ったのだが、小麦粉の裏面にレシピが記載されていた。 「なにこれ?気が付かなかった。ってこれは!?」  記載されていたのはお好み焼きのレシピだった。  材料すら把握していなかったのに作ろうと思った自分の無知さが恥ずかしいが、必要なものはほとんど揃っていて、あとはキャベツと細々とした調味料を買うだけだった。  財布の中は心もとなかったが、卸すことなく買えそうで不幸中の幸いだった。  そんなこんなでスーパーに向かい、まずはキャベツを買うことにした。  普通に一玉買うものだと思っていたが、世の中は便利なもので、千切りになっているキャベツが袋詰めにされて売っていた。  迷うことなくノータイムでカゴに入れて、青のり、かつお節、ソースも入れて、残りの予算を計算しながら、豚肉とお酒を買うことにした。  その後レジをしてもらいながら、表示される金額にビクビクしていた。 「財布の中身が足りんかったらどうしよう?」  この恐怖に包まれていたがギリギリ足りたようで安心した。  財布になかには百円玉と一円玉数枚だけで、二度とこんなギリギリの買い物はしない!と軽くなった財布を持ちながら誓った。  帰り道は虚しさとみっともなさでいっぱいだった。  何はさておき、無事に家に着き早速調理に入った。  小麦粉をレシピ通りに測り、ボウルの中に入れて、測った水と卵を一っ個を注ぎ混ぜ合わせる。  だまにならないようにしっかりと!と記載があったのでしっかりと混ぜる。  だまが消えたところでキャベツを入れて、また混ぜる。  キャベツに馴染んできたと思ったところで、フライパンに油を注ぎ温める。  フライパンが温かくなったところで作った生地を投下し、形を整える。  整形した生地の上に豚肉を乗せて焼く。  焼き色が付いたタイミングでひっくり返すのだが、 「これ、崩れない?」  そう、ひっくり返そうとすると片側に重心が偏り、崩れそうなのだ。  そんなことを言っても、焦げるだけなので、意を決してひっくり返す。  結果だけ言うと、真っ二つに割れた。 「ま、まあ、食べれば一緒だし、小さくなってむしろ楽になったし」  誰に向かっての言い訳なのかは自分でもわからなかった。  おとなしく半分ずつ、反対にした。  なんだか、すごく空しかった。  ひっくり返したら、その面を焼きながら、フライパンに蓋をして蒸す。  中にまで火が通るようにして、火が通ったと思ったタイミングで蓋をあけながら、焼き目が付いたかも確認する。  しっかりと火が通ったら皿に盛り付け、ソース、マヨネーズ、青のり、かつお節をかけて完成である。 「か、かんたんだ!」  そう簡単だった。だから味に不安があったので、すぐに食べることにした。  買っておいた缶のハイボールを冷蔵庫から取り出し開ける。  プシュッといい音を立てる。  この音を聞くと一日の疲れが飛んでいくようだ。  そうしてお好み焼きを一口サイズに切り口に運ぶ。  キャベツのシャキシャキとした食感と甘味、生地のふわふわ感と濃いめのソースの旨味が口いっぱいに広がる。  「美味い」シンプルにそう思った。  そうして、口の中から消えた後にハイボールを流し込む。  「堪らない!これは病みつきになる!」もう止まらないのだ。  気が付けば一枚完食していた。 「あだ生地余ってるし、もう一枚焼いてしまおう」  そうして、もう一枚焼き。  またひっくり返すのを失敗し、真っ二つになった生地を焼いて皿に盛り食べた。  これをもう一度行って系三昧。僕はお好み焼きを食べた。  お腹はパンパンで幸せに満ちていたが、さすがに生地が三昧も焼けるほど作れるのはおかしいと思い、重い足取りで、袋に書いてあるレシピを見た。  記載されていたのは三人前で僕は三人分のお好み焼きを作って食べたのだ。  これはやりすぎた!と心の底から反省した。  レシピの分量と何人前かは今度からちゃんと確認する………
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