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一品目 漫画を再現、ナポリタン
新生活をスタートして一月がたった頃、僕は大きな悩みを抱えていた。
それは「お金がない」ということだ。
原因はわかりきっていた。
ど田舎から大都会、東京への上京に気分が舞い上がり、散財したこと。これに尽きる。
しかし未知の土地で好奇心を抑えるなと言うほうが無理な話だと思う。
特に食べることが好きな僕は、気になったもの店に手当たり次第、手を出してしまったため、財布の中身は軽くなり、銀行の口座残高はみるみると減っていった。
気づいたときには時すでに遅く、銀行の中で「どうすんのこれ」何て独り言が漏れていた。
そうして電話越しに母に泣きついたところ一言
「自炊しろ」と言われたのだった。
幸い実家にいた頃も台所に立つ機会があったため「包丁の使い方がわからない」だとか「火が怖い」なんて馬鹿みたいな事にはならなかったが何から手をつければいいか分からなかった。
現実逃避のために漫画の立ち読みをしていたところとある家庭料理を劇的に美味しくする話が掲載されていたためそれを実践してみることにした。
やることが決まり善は急げと僕はスーパーに向かった。
スーパーに来たのはいいものの食材を買う基準がわからなかったためとりあえず適当に必要最低限のものを買うことにした。
まずはメインで使うパスタ。ゆで時間の違いや値段の違いが分からなかったため、一番量のあるものを手に取った。
続いて野菜。何種類か必要な気がしたが今回は材料費を浮かせるため玉ねぎだけを購入することに。形の違いや品種なんか、ちんぷんかんぷんだったため、広告の品と書かれた商品を手に。
残りは運よく特価になっていたベーコンとケチャップを籠にいれレジへと向かった。
少し重い袋を持ちながら帰路についた。なんだかその日の帰り道はいつもと違う感じがした。
家についてから先ずは買ったものを袋からだしベーコンと使わない分の玉ねぎを冷蔵庫へしまった。
「よし、始めるか」と一人気合いをいれる。
先ずはフライパンの中にたっぷりの水を張り火にかける。フライパンの中に多目に塩を振りかける。
沸騰するまでの間に玉ねぎの皮を剥き、半分に切った後薄切りにする。
そんなに細かく切っていないのに目が痛くなり涙が出そうになる。辛い。
水が沸騰したタイミングで適当にパスタを手に取り、フライパンにぶちこむ。
携帯のタイマーを袋に記載されてある茹で時間にあわせてセットして茹で上がるまで待った。
時間にしておよそ五分、なんだか長く感じた。
パスタをボウルに移し水を切って放置。空いたフライパンに油とベーコン、切った玉ねぎを投入し強火で炒める。
目はやっぱり痛かった。
玉ねぎの色が薄くなったところでパスタを入れ、空いているフライパンの面目掛けてケチャップを投下し焼ける音がしたタイミングで全てを混ざるように炒める。
パスタが赤く色づいたタイミングで火を止め皿に盛り付ける。
ひどく不格好になってしまったが、ナポリタンの完成である。
なんだか嬉しくなり一つ写真を撮りいただきますと呟いて食べてみた。
「うまい」自画自賛であった。麺がモチモチとした食感になっていて、ケチャップの風味が強く感じられた。はじめて作ったにしては上出来では無いだろうか。
漫画にかいてあった美味しくなるポイントは、麺をアルデンテでは無くよく茹でること。作中では冷蔵庫に入れて寝かせるシーンがあったがそこまではしなかった。
そしてもう一つはケチャップを麺に直接掛けるのではなく、少し熱してから混ぜると言うものだった。
たった二つのポイントを抑えて作っただけなのか、はじめての自炊が上手くいった満足感かは分からないが市販のそれよりも美味しかった気がする。
少しは自炊も悪くないな、と思いつつ材料は余っているから明日は少しアレンジしてみようと考えるのだった。
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