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第七品 罪作りなハムカツ
「こんにちわー、お届けものでーす」
ドアの叩く音と共に、外から男性の声が聞こえる。
特にネットで何かを注文した覚えは無いのだが、何か配達物が届いたらしいので、とりあえず受け取る事にした。
さし宛て人には母の名前が書いてあり、荷物の内容は食材どの事だった。
一体何なのか気になり、早速母に電話して聞いてみる事にした。
「もしもし?母さん、オレオレ」
「詐欺か?」
「いや、詐欺では無いよ」
ちゃんと携帯で携帯に電話したから、わかるはずなのに、息子をオレオレ詐欺と言い張る母。
相変わらず酷い人である。
「冗談よ、冗談。わかるでしょ?」
「にしても酷いわ」
「要件は?」
こちらの言い分はサラリと躱され、本題を要求してくる
酷い、酷すぎる。
「いや、何か母さんから荷物届いたからどうしたのかなって」
愚痴るだけ無駄なので直球で聞いてみた
「あぁ〜あれね。何か貰い物で良いハム貰ったんだけど、お母さん一人だと多いからあんたに送った。言ってなかったっけ?」
「聞いてない!でもありがとう」
「ごめんごめん。やんばいして食えな」
雑な謝罪と簡潔な要件だけ伝え、ブツっと電話の切れる音が。
久しぶりの会話もなんのその、言いたいことだけ伝えられ、ハムが届いた事だけを知った母との電話だった。
なんだコレ?
とりあえず、送られたダンボールを開封しハムとご対面。
確かに母の言う通りお歳暮に贈られるような立派なハムがドン!と一つ鎮座していた。
中々食べる機会も無いためテンションが上がり、母への少しの苛立ちはハムをどうやって美味しく食すかへ移り代わっていた。
ハムが届いてからの数日、毎日少しずつ、しかし厚めに切り、焼いて食していた。
偶に卵を目玉焼きにして、贅沢なハムエッグを作って食事たりもしていた。
しかし、しかしだ。
同じ食感、味だと、どんなに立派なものでも飽きが来るのだ。
厚いハムを塩コショウで焼いて食べるだけでは少々の限界を感じ、残りのハムをどうやって美味しく食すか、そればかりに頭を割いていたのだが
「ハムって加工食品だからこれ以上どうする事も出来なくね?」
僕のポンコツな頭脳はこのような結論をだし、迷走しだした。
炒飯やパスタに使うという考えも無くはないのだが、ハムはハムだけで楽しみたい!と言う無駄な欲のせいで実行できずにいた。
「もう何かに使うしか無いのか………」
そう諦めかけた時、何故か地元の祭りの光景が脳裏をよぎった。
まるで走馬灯である。
なんで?とも思ったのだが、これをきっかけに一つの料理を思い出した。
善は急げと自宅にある物と必要な材料を計算し、スーパー買い物へ出掛ける。
この時、何故か何時もよりスーパーへ着くのが少し早かったのは、食欲によるものでは無いと信じたい。
メインとなる食材がある為、今回の買い物は調味料だけで済む様なものだ。
足早に調味料が揃ったコーナーへ向かい、パン粉、小麦粉と油を購入し、他に目をくれることも無くレジへ並んだ。
頭に思い浮かべた料理を早く食べたくて仕方が無かった。
家に着いて残り少ないハムを冷蔵庫から取りだし、卵、小麦粉、パン粉を別々に分ける。
ハムを厚めに切り分け、小麦粉をまぶし、両面にしっかり付いたら、余分な粉を落とす。
次に小麦粉で化粧されたハムを溶かれた卵のプールに潜らせる。
とりあえず、これでもかとハムを卵のプールに泳がせた。
最後にパン粉を全体に付くように、しっかりとまぶす。
気持ちがいきすぎたのか、時折ハムをパン粉の砂蒸し温泉に入れてるようなくらいかけていた。
ここまで切り分けたハム全てに同じ工程を行い、油を多めに入れて、温めて置いたフライパンの中へ入れた。
パン粉がふんだんにまぶされたハムが油の中へ突入していくと、しゅわー、と心地よい音を立てていた。
食材を揚げている時の音と言うのはどうしてこんなに心地よく、食欲を増進させるのだろうか?謎だ。
そんな感じで揚がる音を楽しみつつ、纏っていた衣が、こんがりキツネ色に変わったら裏返し両面をしっかりと揚げる。
全身が美しいキツネ色に変わったら、クッキングペーパーに乗せ、余分な油を吸い出させる。
そうして、ハムカツが完成した。
今日も今日とて作ったハムカツを写真に納め、出来たての揚がりたてを、冷めないうちに食べる事にした。
火傷しそうな程熱いのだが、サクッとした衣の心地好い食感と、良質なハムの分厚い食感はえも言われぬ程楽しく
ハム本来の塩気が丁度良く、最高に美味かった
揚げ物は人を幸せにする最高の食べ物だと思う。
ハムカツは四枚ほど作れた為、味を堪能しつつ冷めないように秒で食べきった。
「カツ最高」自然と口から出て、僕は満足感でいっぱいだった。
この幸せを自慢してやろうと、母親にハムカツの写真を送ってやると
割と早く返信が返ってきた
内容はと言うと「美味そうだね。でも、加工食品のハム揚げるって暴挙に良く出たねー」だった
確かにハムカツは、塩漬けされた豚肉を揚げ物にすると言う、何ともハイカロリーな食べ物だった。
罪悪感という背徳さも相まってあんなに美味しかったのかという謎の結論に至った。
きっと美味しいものは高いカロリーで、できている。
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