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影原主任は湯縣さんから貰った茶色い封筒から資料を取り出すと、それを私達に見せた。
「これは鮫崎氏が興信所を雇って氷室雄一の事を調べさせた報告書だ。ここには氷室の生い立ちから現在に至るまでの事がつぶさに記されてる。これを読んだ鮫崎氏がどう感じたか。たとえ吝嗇家でも暴力団と繋がりがあっても、子供の為に何かしてやりたい。そんな気持ちがあってもいいんじゃないか?」
主任の説に皆、何も言わなかった。
だけど、陽向管理官は反論し続けた。
「確かに。俺にはまだ子供はいないが、子供が生まれたら、そうなるだろうな。だが、自分の息子だからと言って、そこまでする男とは俺には考えられない。現に鮫崎氏は子供達から恨まれていた。喧嘩が絶えなかったって家政婦が言ってただろう?」
管理官の反論に影原主任は頷いた。
「それは俺も思った。でもそれは次男と長女だろ?この二人に関しては喧嘩が絶えなかった。しかし優秀な長男はどうだ?彼は無償で父親の会社の不正を調査していたんだぞ。つまりだ。できのよい自慢の息子には甘いところを見せてしまうのだよ。家政婦に確認すれば俺と同じ事を言うかもな」
影原主任はそう説明したが、陽向管理官は次の質問に移った。
「だとすれば動機は何だ?2000万もの大金を投資し、成功を収めた。言わば大恩人だ。その恩をあだで返す様なことを何故やったんだ?」
いよいよ確信につく質問に入った。
影原主任がどんなことを喋るのか。
全員が彼に注目した。
影原主任はもう一枚の書類を入れ替わる様に見せつけた。
「これは新しい報告書だ。新しいと言っても二ヶ月前の物だが、ここにはこう記されてる。裏の人間と繋がってる可能性大」
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