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家に帰るとドアの前に人影が見えた。
その正体は大方、察しがついていた。
杏美ちゃんだった。
しかも今回は大荷物で、更にはきなこを連れて来ていた。
以前、私と純太さんが住むマンションはペットは大丈夫と杏美ちゃんに言った事があるけど………
これは当分、家にも学校にもいかない覚悟とみた。
突然の訪問に驚きはしなかったが、眼だけは尋常ではなかった。
当初はグラサンをかけていたが、それを外すと真っ赤な眼が姿を現した。
その赤い眼はいかなる殺人鬼をも凌駕していたが、実際の彼女は私を殺すつもりは無い。
恐らく、泣きすぎて眼が赤くなったんだろう。
無理もない。
大好きな彼を学校中の恥さらしにしてしまったのだから。
杏美ちゃんのお父さんに……
とりあえず、純太さんの方を振り向いて許可を得ようとしたら、彼は優しく頷いてくれた。
「ほら、中に入ろう」
私は杏美ちゃんに近付くと、彼女は突然、私を抱きしめた。
そして、手が震え出し、再び、泣き始めた。
私は杏美ちゃんの背中を優しく撫でながら、胸を貸してあげた。
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