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家出の原因は聞かなくても分かった。
純太さんも車の中で今日の事を話してあげたので、大体の事は把握していた。
寧ろ、「また今夜も来るかも」と言って簡単な夜食を買う程だった。
案の定、お腹が空いてたのか純太さんが作ってくれた焼きそばを勢いよく食べ始めた。
「慌てないで。ご飯は逃げやしないわよ」
私は注意を呼び掛けても聞く耳を持たない。
――よっぽど、お腹が空いてたのね。
焼きそばをキレイに平らげると、お茶を一気に飲み干すと、
「フーっ、ご馳走様でした」
と言って杏美ちゃんは両手を合わせた。
そして、私と純太さんに謝罪を述べた。
「今夜もごめんなさい。でも、もうアイツの家にはいたくないの」
そう言うと杏美ちゃんは今日の学校で起こった出来事のその後を話してくれた。
「家に帰った後、玲くんからメールがあったの。『もう終わりだ。学校を辞めるよ』その後も『お前の身体目当てに近付いたのが間違いだった』って書いてあった。私は何とか退学を阻止しようとメールや電話を送ったけど、ブロックされちゃった」
別れ話をする杏美ちゃんの表情は悲しさでいっぱいになっていた。
しかし、それは徐々に怒りへと変わっていった。
「全て、アイツが悪いんだ。アイツがあんな事をしなければこんな事にならずに済んだんだ。でも一番、悔しいのが………」
杏美ちゃんの眼から再び、大粒の涙が零れ落ちた。
「アイツの言うことが、全て正しかったという事よ」
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