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今夜も私は杏美ちゃんと一緒に寝た。
純太さんには申し訳ないけど、またソファで寝てもらう事になった。
「日野さんって本当に優しいね」
寝る前にきなこを撫でながら、杏美ちゃんは言った。
「ええ、だけど、手を出したら容赦しないからね」
大丈夫だと思うけど、一応、クギを刺しといた。
「大丈夫だよ。人の恋人を奪う程、落ちぶれちゃいないわ」
「それなら安心ね」
私はそう微笑むと、杏美ちゃんと一緒に笑い合った。
「絢奈さんには感謝してるのよ。今夜もママみたいでカッコよかった」
そう言うと、杏美ちゃんはお母さんについて話し始めた。
「ママはパパの暴走をいつも止めてた。仕事に関しては何も言わなかったけれど、私と言い争いになるといつも私の味方をしてくれた。今日もママがいたら、絶対に止めてた。というか、三者面談に参加してくれていた」
杏美ちゃんは再び、悲しい表情を見せた。
「ママに会いたいな………」
小さな声だが、寂しさが充分に伝わった。
私は前々から気になっていた。
主任の奥さんはどんな人なのか。
主任を愛し、裏切った女……
思い出させるのも酷なので言わないでおこうとおもっていたのだが、今なら言えるかもしれない。
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