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翌日、早朝……
私は迎えの為に、主任の自宅に来ていた。
しかし杏美ちゃんは学校へそのまま行き、家へは戻らなかった。
だけど、きなこは戻ってきた。
「おかえり、きなこ」
玄関で出迎えてくれた主任ではあるが、それは私の為ではなく、きなこの為だと瞬時に感じた。
きなこやビビにしか見せない満面の笑みがその証拠だ。
だが、きなこは主任の意を反して、そのまま素通りしていった。
そして、ビビのいるリビングへとスタスタと行ってしまった。
…………プッ!
私はつい、吹いてしまった。
行ってしまったきなこを呆然と眺める主任の背中から寂しさが伝わった。
だけど、愛情とはいえ娘を無理矢理、恋人から引き離したんだ。
――これぐらいの罰はあってもいいんじゃない?
だけど、笑っていられるのも今のうちだと自覚していた。
憶測の範囲でしかないが、影原主任の秘密を知ってしまったからだ。
それを思うと、笑いは自然と止まった。
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