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「ほう、私を知っておられるとは光栄ですな」
「私、あるYouTuberのファンでしてね。大学のサークルですが、警察の記者会見をそのままUPをしていたのがありましてね。『皮剥事件』の事が流れていまして、リーダーは捜査に協力したから記者会見に入れたと言っておられました」
――ああ、あの学生達か……
以前、私達は『皮剥事件』の突破口を探る為に奔走していた。
そんなおり、学生達がサークル活動と称して、犯罪現場を撮影していた。
リーダーは怖くて動画をすぐに削除したが、主任は記者会見に参加できることを条件に聞き出す事に成功した。
「リーダーはあなたの名前を出していました。影原警部補と……」
「今は警部です。皮剥事件で上に上がることができました」
「それはそれは何よりです」
「ええ、今回も手柄を立ててご覧に入れますよ」
影原主任は笑みを絶やさずに言った。
私はこの笑顔が怖いと感じた。
だが、その笑みとは裏腹に、相手に気取られぬよう細心の注意を払う姿には感服した。
でも相手も相当な強者だ。
氷室社長も本心を見せまいと終始、爽やかな笑顔を振りまいていた。
まるで私達に挑戦状を叩きつけるかのようだった。
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