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いきなり殺人犯にされたら誰だって怒る。
ところがこの人は一瞬、降着しつつも、最後には声に出して笑った。
「ハハハハッ、僕が………犯人?影原さん、面白い事を仰いますね」
笑う氷室社長に影原主任も笑った。
「そうですね。でもあなたが犯人だという根拠があるんです」
「根拠?」
「まず気になったのはあなたと鮫崎さんの関係です」
影原主任は氷室さんと鮫崎剛志との関係を語りだした。
「おかしいと思ったのは鮫崎さんはあまりお金を貸さない主義でして、それなのにあなたの会社にだけは多額の投資をなさっておられる。将来有望視されてるからと聞こえはいいですが、実際は違う。本当は鮫崎さんの罪滅ぼしなのではと」
「罪滅ぼし?僕の知ってる鮫崎剛志さんはそんな言葉が似合わない男でしたよ」
「その様ですね。しかし、愛する人の為だとしたら?」
「愛する人の?」
「鮫崎さんには2回結婚しておられます。その1回はできちゃった婚だと里井さんが申しておりましたが、流産して離婚したと聞いております」
氷室社長はただ、黙って聞いていた。
「でも彼女を調べた結果、彼女は流産してない事が発覚しまして、彼女は鮫崎さんの暴力的な性格に気付き、流産したと嘘をつき、1人で生む決意を固めた」
影原主任は内ポケットから写真を取り、机の上に置いた。
「その彼女とは黒瀬夏希さん。あなたのお母様ですね?」
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