429人が本棚に入れています
本棚に追加
背筋が一瞬にして凍った。
すぐに隣を向いた。
唐突に鋭い質問を突きつける主任に……
恐らく、わざと怒らせて反応を伺う作戦だと思うが、いきなり言わなくてもよかった。
ところが氷室社長は怒るどころか、青筋を立てる事すらなく、笑っていた。
「フフッ、確かにそうですね。当時、私は資金繰りに困っていました。別に言うつもりはなかったのですが困ってる私を見かねて、鮫崎さんが2000万を融資してくれました。でも、最初に言った様に仕事と私情は分けています。お借りした2000万は倍にして返す予定でした。しかし、今回の事件が起こった」
「なるほど。しかし、それでは納得がいきません」
主任は頷きつつも、氷室社長の過去に疑問を投げかけた。
「ほう、どこが納得いきませんか?」
氷室社長は怒ることなく尋ねた。
「バーで意気投合したというのがおかしい。確かに有り得る話だとは思いますが、私にはあなたが鮫崎氏の事を予め調べた上で、彼と出会ったとしか思えません」
そう言うと、主任はスーツからスマホを取り出し、液晶を社長に見せた。
そこには『スパイダー』というお店が写っていた。
「ここであなたと鮫崎氏は知り合った。しかしバーのマスターによると、ここは鮫崎氏の行きつけのお店で、あなたはマスターに鮫崎氏の事を聞いていたとか。そして、調べた上で近づいた。意気投合したとはちょっと語弊があるんじゃないでしょうか」
最初のコメントを投稿しよう!