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Dバックルを突きつけた時、氷室社長の表情が遂に崩れた。
口を開いたまま唖然となり、ただ自分の腕時計の部品を見つめていた。
それにしてもだ。
私は少し腹が立った。
このDバックルは私が発見した証拠品だからだ。
影原主任は全くと言っていい程、興味を示さなかった。
『これが犯人のだとは決めつけるな。鮫崎剛志のかもしれないだろ?』
こう言った時の主任の態度が今でも忘れられない。
にもかかわらず、発見した私よりも先に科捜研に報告を受け、結論に導いた。
いや、そもそも指紋が検出されたという報告自体、主任の嘘かもしれない。
影原主任お得意のはったりだ。
――相変わらず可愛げのない人……
私は見下す様に相棒を見つめた。
そして、その相棒のはったりは今回も成功した。
唖然と口を開けていた氷室社長ではあったがソファに倒れるようにもたれかかった。
そして、全てを諦めたのかフッと鼻で笑った。
「分かりました。約束は約束だ。署に行きますよ」
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