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半ば疑い独りごちる玄焔の冥い黒い瞳の中で、それは瞬きを許さぬ速さで形を成しこちらへと近付いてきた!
玄焔の眼前に姿を現したのは一羽の鳥だった。
冠羽という言葉そのままに、頭の天辺には豊かな飾り羽根を頂き揺らめかせている。
雨上がりの砂漠の重い風にそよとたなびく尾羽は三本有った。
その冠羽から尾羽の先まで、又音無く羽ばたかせている両の翼もその大本の体もが全く、鮮やかな朱を帯びた黄金色だった。
魔物が呼び掛ける。
「不死鳥よ――。おまえか」
この砂漠の主たる双璧の片割れ。
緋蜥蜴と対を為す燃える焔に包まれし、眞なる不死鳥。
鳥は人の言の葉は発しなかった。
しかしその代わりになのか一声、――細く高くそして長く啼いた。
それを「是」と見做した玄焔、冷たき緋蜥蜴の口の端には笑みめいたものが刻まれた。
「久しいな。汝は此処に在り続けたか」
鳥は不死鳥はやはり朱い黄金の円い目に玄焔を映し出した。
玄焔の頭よりもやや高い辺り、見えない宙を一対の脚がしかと掴んでいる。
「最期に逢えてよかった。おれは再び魔界の淵へと沈む。・・・・・・?」
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