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黄金の鏡に映し出された魔物の貌が疑いに歪む。
不死鳥がひと際大きく様々な色合いの黄金の翼を広げ、掴んでいた宙を離し蹴った。
刹那、玄焔へと否、――玄焔がその腕に抱く氷翠の亡骸へと降り立った!
「⁉」
氷翠の体へと吸い込まれるかの様に、不死鳥はその姿を消した。
黄金色の焔が氷翠をすっかりと包み込む。
あまりの光の強さに眩さに思わず玄焔も刹那の間、目を閉ざした。
玄焔が次に冥い黒い瞳を己の両の腕へと落とした時、果たして――。
氷翠の体は確かにそこに在った。
不死鳥の焔や光に少しも損なわれることなく、全く変わらずに。
否、変わっていた。
氷翠のけぶる銀のまつ毛が細かく震え、まぶたを押し開いた。
現れた翠玉の瞳の中、その光と並び立つ朱い黄金の色を見出すや否や、玄焔は我知らずつぶやいていた。
「なぜならわたし自身も燃えて生き返るからだ――。眞なる不死鳥‼」
「クロ、エ・・・・・・?」
下僕たる魔物は感極まり、主の薄い胸の心の臓あたりに顔を伏せた。
そこから聞こえる鼓動の音に肉に通う血の温かさとに、玄焔は今一度眞なる不死鳥の謂われを唱える。
「なぜならわたし自身も燃えて生き返るからだ」
「玄焔――」
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