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雪の章②
正樹は転倒したが、元々身の軽いたちで降り積もった雪がクッションになっていたのか、ダメージはほとんどなかった。
少女の目前でなんとか止まることが出来たよあだ。
すぐ起き上がると少女の前に飛び出た。
「おい、大丈夫か?しっかりしろ!」
白い髪の少女の身体を揺さぶった。
少女はうっすらと目を開けた。
「あなたは?わたし、どうしてここに?」
「きみが急に飛び出してきたもんだから、びっくりしたよ。」
少女は正樹の擦り剥いた右腕をみた。
「あなたこそ大丈夫ですか?」
「あっ、おれは大丈夫さ。ほらこの通り。」
正樹は腕をぐるぐる回して見せた。
擦り傷ではあったが、打撲はあったようで少し痛んだ。
「あ、痛え」
「本当に大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと打ったからね。」
正樹はちょっと痛みは感じていたが、かっこ悪いところを見せるわけには、いかなかった。
それに初対面なのになぜかこの少女に魅せられていた。
「おれの名前は芝田正樹、きみは?」
「わたしわからない、名前がわからない‥」
「ええっ、まさかさっき倒れたときに記憶を?」
少女は顔を左右に振り、否定した。
「いいえ、違います。わたしは自分がわからなくなり、あの十字路を歩いていたんです。」
「そう、そうなの‥」
‥困ったな、レコーディングの時間に間に合わさなきゃならないし、でもこの子をこのままにしておくなんて出来ない‥圭司すまん、許せ!‥
「ちょっと待ってね。電話するところあるから!」
正樹は携帯を取り出し小野寺プロデューサーの番号を押す。
小野寺はすぐさま電話に出た。
「おう、正樹か。みんなスタンバイしてるぞ!もうすぐ来れそうか?」
「それが‥事故っちゃって‥」
「なに⁈怪我はどうなんだ?おい大丈夫か?」
」
小野寺の声が響きわたる。
「ちょっと足を怪我して、大したことありません。ちょっとだけ時間をもらえますか?」
正樹は罰悪そうに答えた。
「お前、集中してるか?今日が大事な日だていうことを。もういい今日は取りやめだ!また連絡する。」
小野寺の怒り声が突然切れた。
‥小野寺さん、めちゃくちゃ怒ってたな。もうだめかな‥
「あのー‥」
少女は心配そうに声をかけた。
「ああ、ごめんごめん、きみは心配することないさ。雪が酷いし、このまま1人にしておけないよ。
おれのアパート、ここから近いからさ。落ち着いて話そう。思い出すかもしれないよ。」
少女はこくりと頭を下げた。
」
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