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雪の章③
窓の外を見るとかなりの雪が降り積っていた。
「この部屋、コタツしかないけどごめんね。」
「ううん、わたし寒いのは強いほうだから大丈夫。」
少女は正樹を見つめて言った。
「そう、ところで名前はやっぱり思い出せない?」
「全然だめ‥」
‥そらそうだよな。だからあの十字路を彷徨ってたんだもんな‥
「名前がないと、話しにくいのでユキでどうかな?当たり前過ぎるけど雪が降ってるから。
正樹は罰悪そうに答えた。
「うん、いいよ。そのうち思い出すかもしれない。」
‥ユキ、なかなかいい名前だ。‥
「ユキ、お腹空いてるだろう。簡単なものでも作るよ。ちょっと待っててね。」
正樹は買い置きのカップラーメンを取り出し
コタツの上に置いて、持ってきたポットからお湯を注いだ。
「カップラーメンだけど召し上がって。」
「ありがとう!」
ユキは手を合わせると、カップラーメンを食べ始めた。お腹が空いていたのか一気に食べた。
「すみません。お願いしていいですか。お水をもらえますか?熱いもの苦手で。」
「ちょっと待ってね。」
正樹はコップに水を入れるとユキは流しこんだ。
「おかわりいただけますか?」
ユキはコップ5杯の水を飲んだ。
‥大丈夫なんかな。水を大量に飲んで‥
正樹は少し疑問に感じた。
その時玄関のチャイムが鳴った。
「誰か来たみたいだ。行ってくるね。待っててね。」
ユキはコクリとうなづいた。
その姿がなぜか正樹には幻想的にみえ頭から離れなかった。完全にうわの空であった。
だから来客が誰かも確認せず、すぐさま玄関を開けてしまった。
「あっ!」
花の章へと続く。
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