7人が本棚に入れています
本棚に追加
月の章①
お昼休みに正樹は圭司へすぐ連絡を取った。
「圭司、レコーディングの件で小野寺さんに即連絡を取れないか?」
「何言ってんだ、お前。レコーディングは一週間後だぜ。バックバンドもそのスケジュールで手配してるぜ。」
圭司はぶっきらぼうに返事した。
「圭司、あのさー新しいメンバーが見つかったんだ。」
「何寝言こいてる?どこのどいつだ。お前の知り合いか?」
正樹は落ち着いて答える。
「まあ、そうだな。とにかく明日スタジオへ来てくれないか?」
「明日か。明日はおれはバイト休みだな。よし、お前がマジで言うからには。やってみる価値はありそうだな。」
圭司はどうやら気乗りしそうでないが、明日はなんとかなりそうだ。
「小野寺さんの同行もら頼むよ。明日午後一で待ってるからさ。」
「ああ。」
圭司は、面倒くさそうに答えた。
正樹は携帯を切って、ユキの方に顔を向けた。
「ユキ、圭司が明日来てくれるよ。」
「良かったね。」
ユキの表情はいつもより明るくみえた。
「もう一回、さっきのところから始めようか。」
‥絶対いける。おれたちは。3人でやれる。
最高のパワートリオさ。‥
ユキのキーボードと正樹のギターは見事に溶け合っていた。
もう何年も一緒にやっているかのように。
「ちょっと一服長すぎたかな。正樹の奴、ちゃんとやってるかな。」
佐々木は煙草をくわえながら、スタジオのドアを開けたとき、聴こえてくる音楽に圧倒された。
‥すごい。誰の声だ。この天使のような響き‥
佐々木は思わず尻餅をついた。
最初のコメントを投稿しよう!