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月の章②
圭司は朝方まで飲んでいたせいか、頭ががんがん疼いた。
‥今日は仕事オフだから、ゆっくり寝るつもりが‥正樹の用事思いだしたわ‥早く終わらしてもう一眠りするか‥
スタジオには早めに来ていてソファーにどっしりと座り込んでいた。
番頭格の佐々木が忙しそうに走り回っている。
‥それほど大袈裟なリハーサルか‥
圭司がそんなことをふと感じたとき、ドアが開き正樹と少女が姿を現した。
「圭司、早かったな。」
「まあな‥昨日呑んでたので、目覚めが早かったわ。リハやろうか。」
「ああ、その前に彼女を紹介しとくよ。」
圭司は先程から少女のほうに釘付けになっていた。なぜかこの世のものと思えない不思議なものを見るような気がしていた。
「彼女はユキ、記憶を失ってるんだ。それでおれが記憶が戻るまで一緒にいることにしたよ。」
「おいおい、いいのか。そんなの‥」
圭司は不安そうに尋ねた。
「彼女も記憶が戻ったら、家に帰りたいと言ってる。圭司、とにかくユキの歌をきいてくれないか。おれがアコギで伴奏とるからさ。」
「わかった。」
ユキはピアノの前に座り、歌う準備をした。
そして正樹も椅子に腰掛けギターを手に取った。
ユキはピアノでイントロを弾きながら、マイクに向かった。
正樹はカウントを刻む。
1234‥
そしてユキが歌いはじめた。
圭司はその瞬間、衝撃を覚えた。
‥なんてすごいんだ‥
胸を打つ歌声とピアノの華麗な演奏に我を忘れていた。
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