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雪の章 ①
バイトを終えた正樹は雪の降りしきる中をかなりのスピードでバイクを走らせていた。
‥圭司のやつ待ちくたびれてるだろうな。‥
今日は夜の8時からスタジオで新曲のレコーディングを行う予定であった。
正樹と圭司は一年前に新人バンド、スノーズでデビューしたが、全くの鳴かず飛ばずで今日の
レコーディングに再起をかけていた。
しかもベーシストが脱退したため、今日はスタジオミュージシャンを呼んでの貴重なチャンスであった。
‥プロデューサーを引き受けた小野寺は時間に厳しい人物だと聞いている。
なんとしても間に合わさなきゃ。‥
正樹がふと考えことをして疾走してる間に大道寺の交差点まで来ていた。
ここの交差点は中核都市である長峰市の中で最も事故が多発しており、悪魔の十字路、デビルロードと名付けられていた。
‥悪魔の十字路、まるでロバートジョンソンの伝説じゃないか。
クロスロード伝説、1930年代のブルースマン、ロバートジョンソンは十字路で悪魔に魂を売り、ギターテクニックを得たとされる。
‥おれももう少し腕がよけりゃな‥
とにかく今回は絶好のチャンスだ。小野寺さんが目をかけてくれた。なんとしてもがんばらなきゃ。‥
この一年、ドラマーが抜けたにもかかわらず、正樹と圭司は懸命に練習を積み重ねてきた。
今日はその成果を試されるときなのだと強く意識していた。
‥雪が酷くなってきたな。前が全然見えねえー‥
その時前方に人影が見えた。
「危ない!」
正樹は咄嗟にハンドルを左に切った。
そしてその瞬間、スリップしバイクから投げ出され地面に落ちた。
人影は白い髪の毛をした美しい少女であった。
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