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 部屋の電気もつけないまま、縺れるようにベッドに倒れ込んだ。キスを続けながらシャツを脱ぎ、邪魔なズボンは足で蹴とばした。 「理央さんが、俺のベッドにいるなんて、信じらんない……っ」  日向が感慨深そうに可愛いことを言っている。 「な、んだそれ……」 「すごく、嬉しい」  キスの合間を見計らって、日向が額を寄せてくる。可愛すぎて一言からかってやろうと思っても、理央が熱い息を吐けば、その熱はすぐさま日向に吸い上げられた。 「ふ……、っ……ぅ」  がっつかれている。理央は日向の胸に手をつき、口腔に差し込まれた舌に応えた。ぴったりと舌を重ねているだけで、息があがるくらい気持ちいい。 「んぅ……ふぅ、んっ」  舌先を噛まれれば、鼻から抜けるような声が出た。 「ねえ、本当にいいんだよね? 俺のこと好きになってくれたんだよね?」  色を含んだ声に、思わず体が反応する。理央は返事をしなかったが、ぶわっと顔が赤くなったのを日向は肯定的に捉えてくれたようだった。 「どうしよ……絶対に途中でやめられない……」 「……やめる必要なんてない、だろ……」 「ちょっと、理央さん、ほんと……」  首に抱きついて深いキスを続けていると、腰に回されていた日向の手は、意図を持って理央の素肌を撫ではじめた。背中、脇、臍、胸。期待を隠さない肌はすぐに日向の手に馴染んでいく。 「あっ、……っ、んッ」  日向の手にきゅっと両胸の尖りを摘ままれ、理央は思わず唇を離して喘いだ。弄られすぎて人より大きいそこは、少し愛撫されただけでも甘い疼きを全身に伝える。 「ちょっ、ひな、あっ……んんっ」  日向は反応に気をよくしたのか、理央の胸に唇を寄せ、色づいた粒を強く吸った。 「ひっ、あっ、そこ……いらなッ、んんっ」  理央は堪らず日向の肩を押したが、その抵抗は受け入れてもらえなかった。尖りを唾液で濡らしながら、甘く噛んでは舌で遊ばれる。空いた片方は指先で執拗に捏ねられた。 「あっ、や、だ……ッ日向!」  腰が揺れるのを堪えながら、理央はふるふると首を振った。  弄られ過ぎた乳首は、息を吹き掛けられるだけで下肢を疼かせる。理央は一向に顔をあげない日向の頭を抱き締め、その硬い腹に腰を擦り付けた。 「そこ、もういいから、早く次……っ」  そう懇願すると、日向はようやく理央の胸から顔をあげた。 「可愛くてつい……、ごめんね?」  反応しきった性器を下着越しに撫でられる。たったそれだけで、性器の先端から蜜が滲むのがわかった。 「ひ、なた……っ」 「うん……」  腰骨に甘く歯を立てられ、大きく腰が揺れた。皮膚の薄いところへ痣を残すようなキスが落とされ、気づけば下着を剥ぎ取られていた。 「あ……っ」  日向は嬉しそうに笑うと、剥き出しになった理央の陰茎を握った。手を優しく上下させ、親指の腹で雫の湧いた先端を撫でる。滑りを広げるように窪みを弄られ、理央は全身を震わせた。 「気持ちいい?」  理央の様子を見ながら、日向が手つきを変えてくる。気持ちよすぎて、理央は日向の手から目が離せなくなった。 「な、俺もやって、やるって、……ぁっ」 「また今度ね」 「あっ、んっ……、ひな……っ」  陰茎をしごかれながら、張りつめた陰嚢を左手であやされる。限界が近かった。日向にしがみついていないと、膝が震えて倒れてしまいそうだった。 「我慢しないで、いっていいよ」  ひとりで先に果てるなんて嫌だ。そう思うのに、日向は手の動きを速め、理央がやめてと頼んだ乳首への愛撫を再開した。 「や、やだっ、やっ、あっああっ」  左胸を齧られ、性器の弱いところに指を引っかけられる。限界まで我慢していた理央は、快感が弾ける瞬間、ぎゅっと目を瞑り、泣きながら日向の頭を抱えた。 「は、……あ、あ……」  力んでいた体から力が抜け、理央はベッドに尻をついた。 「泣いてる……大丈夫?」 「平気、ってか……ご、めん」  涙を拭おうとする日向の腹は、理央が吐き出した白濁でべっとり汚れていた。他人との行為には慣れているはずなのに、恥ずかしくて目を向けられない。  理央がとりあえずティッシュを取りに行こうとすると、日向に腕を引かれ、ベッドに引き戻された。 「いらないよ。これ、今から使うから」  日向は胸に飛び散った残滓を手ですくうと、「続き、いい?」と言って理央を押し倒した。  景色が逆転し、理央は思わず目を見開いた。 「え、ああ――」 「怖い……?」 「あ、や、そういうわけじゃ……」  日向に押し倒されても怖さはなかった。  ただ、こうして上から見下ろされると、信じられないくらい緊張しはじめてしまった。  目の前に日向がいる。日向と抱き合っている。自分はこんなに可愛い男に抱かれようとしているのか? それを再認識し、体温が二度ほどあがったような感覚にとらわれた。 「俺……、あ……」 「ごめん、ちょっと、余裕ない……っ」  日向は理央の右足を持ち上げると、露になった後孔にすくい集めた白濁を塗りつけた。そして、ひくつく絞りに指を侵入させ、切羽詰まった手つきで、自身の熱を受け入れさせる準備をはじめた。 「っ、はぁ……あっ」  一度射精してしまえば、思考力に少しだけ余裕が生まれる。  理央は額に汗を滲ませている日向に手を伸ばし、その髪に指を差し入れた。髪の中までしっとりしている。理央の体を慣らすことに没頭している日向は、本当に余裕がなさそうだった。 「日向……?」  目線だけで返事をされる。 「……そこ、そんな丁寧にしなくても平気だから、きつかったらもう挿れても――」 「ごめん……」  理央の中に埋めていた指を抜き、日向は理央の腹に額を押しつけた。 「今、ちょっと闘ってて――」  闘うって、 「……何と?」  射精欲だろうか。理央がまばたきをしていると、日向は大きく息を吐き、小さな声で「嫉妬」と零した。 「嫉妬?」 「ごめん……理央さんのこんな姿を色んな人が見たのかと思うと、うらやましいというか、悔しいというか、なんかちょっと色々」  その声に理央を責めるような色は含まれていなかった。しかし、日向は理央の腹に顔を伏せたまま、息をする以外ぱたりと動かなくなった。 「……汚ねぇ?」 「なっ、違う!」  勢いよく顔をあげた日向の表情は、耳を垂らした犬のようだった。さっきまでがっついていた男とはまるで別人だ。 「じゃ、どうした?」 「……綺麗すぎて、その辺のやつになんて見せたくなかった……」  真剣な顔で訴える日向に、理央は照れくささを通り越して思わず笑ってしまった。我慢しようと思って声は堪えられても、腹筋が震えるのは堪えられない。素肌で抱き合っている日向には、理央が笑っていることは筒抜けだった。 「なんで笑っ――」 「可愛いから」  理央は日向の髪をわしゃわしゃと掻き回し、黒髪に鼻を埋めて匂いを吸い込んだ。 「ちょっ、犬みたいに、何……っ」 「俺、さっきまでインポだった」 「はい?」 「あとはそうだな、おっさんにフェラさせたことはないし、ゴムなしでさせたこともないし……あ、おっさんのテクでイッたこともないな」  寝そべったまま指折り数えていると、日向は戸惑った顔で理央を見下ろした。 「いつも、好きでもないおっさんに『好き』って言って、そんなこと言う自分の声に感じてイッてた。自分でも変態だなって自覚はある」  理央がそう言うと、日向は慌てて何か言おうとしたが、手で唇を塞いで何も言わせなかった。 「俺、人から『好き』って言ってほしいって思ったの、日向がはじめてだよ」  今まで、人から「好き」なんて言われようものなら、鳥肌が立って気持ち悪くて仕方なかった。それなのに、日向には言ってほしいと思う。  理由は、考えるまでもない。 「日向を好きになったから」  そう言って笑うと、さっきイッたときの涙が残っていたのか、また泣きそうになった。 「なあ、続きは……?」  日向の唇を塞いでいた理央の手を掴み、日向はその手の平や手の甲にいくつもキスを落とした。キスされるたびに「好きだ」「好きです」と言われ、何だかどこぞの姫君にもなった気分だったが、日向も泣きそうな顔をしていたので、言っている内容はお互い様だなと思った。 「痛かったら、言ってね……」  汗ばんだ肌に覆い被され、柔らかくなった後孔に日向の切っ先が擦り付けられる。耳朶を優しく噛まれ、思考の回らなくなった頭で理央は何度も頷いた。 「はあ……っ、あっ、……っ」  熱を泥濘へ沈めるように、日向の先が中に挿ってくる。理央は浅い呼吸を繰り返し、その結合部に眺め入った。  正常位は腰を高くあげる必要があって苦しい。しかしその分、自分の性器が限界を訴えている様子も、日向の猛りに脈が浮いている様子もすべて見える。 「ぅ、あっ」  今、自分の体を侵しているのは日向なのだと思うとひどく胸が喘いだ。 「理央さんの中、すごく気持ちいい……」  そう言って、ぎゅっと抱き締めてくる。日向の匂いが鼻を掠め、理央は肩で息を吐きながら腕を日向の背中に回した。 「動いて平気?」 「そんなの、あ……っ」  むしろ早くほしい。そう言いかけて言えなかった。  深いキスをせがまれ、応えているうちに体は日向のペースで揺さぶられていた。高い位置で腰を固定され、最奥まで押し込むような抽挿が繰り返される。 「あっ、……んっ、あぁっ、あっ」  体はきついのに気持ちいい。セックスがこんなに気持ちいいなんて初めて知った気がする。 「理央さん、こっち、自分で弄ってみて?」 「へ……?」  日向にうながされ、理央は一度射精してから半勃ちのままだった自身の性器に触れた。他人に自慰を見せるなんて絶対に嫌なのに、日向に言われると、理央の喉はごくりと鳴るだけで抵抗を言葉にしない。 「ん、んんっ」  手で筒を作り、自分の好きな力加減で陰茎を擦る。すぐに硬さを取り戻した理央の性器は、擦ってやるたびに先端から蜜を零し、日向を包んでいる内壁をも蕩けさせた。 「中、うねってすごい」 「ひっ、やばい、から、なあぁっ」  日向は理央の脚を抱え直すと、入り口から奥まで全てを擦るように抽挿を繰り返した。頭がバカになりそうだった。夢中で性器を擦ると、中が日向の動きに合わせるように収縮をはじめる。 「だめ、……だっ、あっ、やあっ」  うわ言のように「だめ」を繰り返す理央の耳朶を噛み、日向が耳の中に直接「好きです」と熱い息を吹き込んでくる。  心臓がばくばく鳴ってうるさい。 「日向っ、またっ、出そ……あ、っ」  再び限界を迎えようとしている理央の性器はしきりに涎を溢し、擦りたてる持ち主の手をぐしょぐしょに濡らした。張りつめた陰茎がいっそう膨らみ、奔流がこみ上げてくるのを予感させる。 「イく……っ、も、ああっ、く……っ」 「俺、も……っ」  食らいつくようなキスを重ね、振り落とされないよう濡れた両手で日向の首にしがみついた。  好き、好きだ、好きです。経験のない快感が視界を白ませる。 「理央さん……っ」  理央が息を詰めるような嬌声をあげたとき、体の一番奥に叩きつけられるような飛沫を感じた。  誰かを誰かの代わりにするなんてできない。頭の中に住み着いて離れない『日向』だけが、こんなにも理央を満たしてくれる。  好きだ――。  喘ぎすぎて掠れた理央の声では、それは音にならなかった。ただ、ゆったりしたキスを送ってくる日向の顔を見る限り、きちんと伝わったみたいだった。
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