本編

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 神様、ゴメンナサイ。 ザンゲします。  前から構ってほしかった大好きな先輩に、酔っ払ったフリをして絡みました。  はしゃぐおれを黙らせるためにイカ焼きを食べさせてきた指先を、ガマン出来ずに思わず舐めちゃいました。  あと、先輩へと差し出したワンカップ酒、実はコッソリとコートの内ポケットに入れて温めておいたものです。 これがホントの人肌燗――。 なーんちゃって。  まだまだあります。 眠くなってつい寝ていたら、先輩は自分のコートまでおれの体に掛けてくれました。 実はおれ、あの時起きていたんです。  薄目を開けて見ていたら、頬っぺたについた花びらをそおっと取ってくれました。 うれしかったです。 優しいんだなぁって、ジーンときちゃいました。  神様、ゴメンナサイ。 おれはこのまま酔っ払ったフリを続けて、先輩のことを騙します。 ――こんなに優しい先輩ことを、ホテルへと引っ張り込みます。  神様、お願いします。 どうか、どうかゆるしてください。 そして、うまくいきますように――。    あとはもう散るだけの、満開の桜の木を見上げていたおれの耳に先輩の声が届く。 「何してんだ?置いてくぞー」 「待ってくださいよ~」  おれはわざと間が抜けた返事をする。 その途端、先輩ではなくて、――まるで桜の木が応えたかのようにその枝を揺らし花びらを降らせた。                 終
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