第十五章

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「ママ、もう痛いの治ったの?」 「うん。もう治ったよ」  幸太の声に史哉もぼんやりと目を開けた。けれどまだ完全に覚醒してはいないのか、幸太ごと静香の身体を抱きしめてくる。 「はよ……幸太、昨日遅かったのに、よく起きれたな」 「僕もう小学生だもん。早起きできるよ」  静香と史哉の間から得意げな幸太の声が聞こえる。そういえばいつのまにか朝すんなりと起きて学校に行くようになった。  この先ももっともっと成長していく幸太の姿を見られるのだ。生きてさえいれば。そんな未来を自分から閉ざしてしまうところだった。 「いつ病院に来たの?」 「あ~二時過ぎか。戸澤の家に行って、マンション戻って……幸太連れて病院来た」  そう告げる史哉はまだ寝足りないのか、幸太を胸に閉じ込めて静香を抱きしめたままうつらうつらし始める。 「よく入れてもらえたわね。面会時間過ぎてるのに」 「そりゃお前。自分がしたこと考えれば当然だろ」 「あ……それもそうね……」  自殺しようとした人間を一人で病室にいさせるはずがない。だから特別に個室にベッドを運び入れることも許可されたのだろう。
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